第23話 偽物の女神と本物の女神様

文字数 807文字

 魔力をたっぷりと回収してから、魔道獣は私の元へ戻ってきたわ。

「待たせたわね。さあ、来てアン。私と一つになりましょう。そして、私たちがこの世界の新しい女神になるのよ」

 さっきから、私の猫耳の魔道具が機能していないのが気になる。

「あなた、魔道炉にいったわね。まさか、あそこを破壊したりしてないでしょうね?」

「うふふ、ちまちま魔力を吸収するのが面倒だったから、壊しちゃったわ♪ 建物を壊して中に入ったら、一気にたくさんの魔力を吸収できたの」

 マズい。
 あれが壊れると国中に高濃度の魔素が放出されてしまう。
 魔素に耐性の無いこの国の人達が、みんな魔物化してしまうわ。

 そんな私の心の中を見透かすように、魔道獣が笑って呟いた。

「ねえ、アンは複数の魔道獣を寄生させてるんだから、魔素に耐性があるんでしょ? だったら、何も問題ないじゃない。ま、私たちはこれから一つの女神になるんだから、そんなことどうでもいいけどね、あはは♪」

 このままだと、このローゼンブルグの人達が、みんな魔物に変わってしまう。
 私は、どうしたらいいかわからなくなって、頭が真っ白になってしまった。

 魔道獣は私に近寄ってきて、耳元で囁いた。

「アン、やっと私とあなたの理想の世界が作れるわよ。魔道炉から溢れ出た魔素に侵されて人間が魔物化したら、私たちの能力で操るの。私とあなたの思い通りの世界が出来るわよ」

 違う。
 そんなのは私の望んだ世界じゃない。

 でも、目の前の魔道獣が、本物の宮古様に見えてしまって、私は頭がどうかしてしまいそうになっていたの。

「さあ、来てアン。私と一つになるの。私と一緒なら、なんでも出来るし、なんでも叶うの。だから、私のところへ来なさい」

 このままだと、私はこの魔道獣に取り込まれてしまう。
 どうしたらいい?

 どうしたら……

 その時、目の前に急に光のゲートが現れた。
 そして、その中から、本物の女神様と、かわいい女の子が出てきたの。
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