第50話 天十郎の引きこもり
文字数 1,406文字
記念式典も近づくなか、数日前から、天十郎は引きこもりの場所を二階から、夏梅のソファベッドに変えて来た。
【ソファベットの上で】
離れる事なく、ふたりでゴロゴロしている。天十郎は、事件の事を一言も話さない。黙ったまま、時々、うつ状態の夏梅の顔や手や髪を触っている。蒲のいないときに、キスもしている。
夏梅は、なされるがまま、天十郎のディープキスも抵抗する様子は見せない。今回の吉江の件では、刺激が強すぎた。何が癒しになるかわからない。僕はそんなふたりを、見ていないふりをしていた。
【蒲はまったくあきらめが悪い】
今日の蒲は、ソファベッドに上がり込んで、先ほどから今度は夏梅に力説している。天十郎は何も言わない。
僕はソファベッドでいつものように、夏梅を抱きしめていた。天十郎も隣にいる。
「夏梅にとって俺たちは、家族を作る道具だ。それと同時に俺たちにとっても夏梅は道具だ。子供の頃に親たちに抱きしめられ、恋人に抱きしめられる。そんな時期も長くは続かない。だから子供を抱きしめ、孫を抱きしめる。親と同じような愛し方をしてくれる人に出会うのは、奇跡に等しいだろ?そうやってスキンシップをとって精神的な安定を得るために家族形態を作るのは間違っていないだろ?な、夏梅」
「意味がわからない」夏梅はあくびをしている。
「夏梅。天十郎や俺を利用しろ。雄の本能を満足させるために女性が存在してしまったら、それこそ、やり逃げばかりだ。そして、女性が一人で苦労して子育てをすることになる。女性と男性のつくりが違うのは、役割も目的も違うからだ。一方に合わせると必ず歪が出来る。機能が違うのに、理解しあうこと自体に無理があるだろう。だから、俺らのような存在が必要だ」
「私には必要ないけど…」
「いや、夏梅は特に必要だ。俺らには、新しい家族の形態が必要だよ。だから、天十郎と籍を入れろ、経済的に守ってやる。きっと、俺らなら、やって行ける。考えろ、夏梅。結婚する意味を家族と言う意味を。今俺らは本気で考えなくてはいけない」
蒲の独演会は終わったようだ。どうやら、黒川氏の事務所が、うまく稼働できなかった場合を考えて次の手を考えているようだが…。蒲は、天十郎と暮らす事が出来るように、必死に考えたな。なんと利己的発想だろう。
夏梅も天十郎もソファベッドの上でゴロゴロしながら、蒲の独演会を適当に返事をしながら、まともに聞いていなかった。
「どんな人種だよ。だから、なんだよ」夏梅は半分寝始めた。
「おい、まだ続くのか?終わったのか?」天十郎が久々に言葉を発した。
夏梅は天十郎に聞いた。
「ようは、蒲は何が言いたい。天十郎には意味がわかるの?」
「俺と入籍しろ、と蒲が言っている。わけがわからん」
天十郎はあきれている。
「なんと、回りくどい奴だ。デカマッチョはそれでいいのか?」
「バル乳がいいなら」
「そうか…。塁は反対しないかな?」夏梅が小さく言った。
そもそも、天十郎は、蒲と二人でこの家を出たがっていたが、僕が存在する限り、蒲にはそれが出来ない。天十郎が、この家がいやなら、天十郎だけが出て行くしかないのだが、そこをなんとかしようと、蒲が企んで提案している。
僕は蒲に向かって声を荒げた「蒲、もう辞めろ。夏梅がつらそうだ」
しかし夏梅と天十郎にまた再度しつこく迫った。蒲の面倒臭い行動に、二人ともうんざりして、適当に頷いている。
「決まったな」満足げだ。
【ソファベットの上で】
離れる事なく、ふたりでゴロゴロしている。天十郎は、事件の事を一言も話さない。黙ったまま、時々、うつ状態の夏梅の顔や手や髪を触っている。蒲のいないときに、キスもしている。
夏梅は、なされるがまま、天十郎のディープキスも抵抗する様子は見せない。今回の吉江の件では、刺激が強すぎた。何が癒しになるかわからない。僕はそんなふたりを、見ていないふりをしていた。
【蒲はまったくあきらめが悪い】
今日の蒲は、ソファベッドに上がり込んで、先ほどから今度は夏梅に力説している。天十郎は何も言わない。
僕はソファベッドでいつものように、夏梅を抱きしめていた。天十郎も隣にいる。
「夏梅にとって俺たちは、家族を作る道具だ。それと同時に俺たちにとっても夏梅は道具だ。子供の頃に親たちに抱きしめられ、恋人に抱きしめられる。そんな時期も長くは続かない。だから子供を抱きしめ、孫を抱きしめる。親と同じような愛し方をしてくれる人に出会うのは、奇跡に等しいだろ?そうやってスキンシップをとって精神的な安定を得るために家族形態を作るのは間違っていないだろ?な、夏梅」
「意味がわからない」夏梅はあくびをしている。
「夏梅。天十郎や俺を利用しろ。雄の本能を満足させるために女性が存在してしまったら、それこそ、やり逃げばかりだ。そして、女性が一人で苦労して子育てをすることになる。女性と男性のつくりが違うのは、役割も目的も違うからだ。一方に合わせると必ず歪が出来る。機能が違うのに、理解しあうこと自体に無理があるだろう。だから、俺らのような存在が必要だ」
「私には必要ないけど…」
「いや、夏梅は特に必要だ。俺らには、新しい家族の形態が必要だよ。だから、天十郎と籍を入れろ、経済的に守ってやる。きっと、俺らなら、やって行ける。考えろ、夏梅。結婚する意味を家族と言う意味を。今俺らは本気で考えなくてはいけない」
蒲の独演会は終わったようだ。どうやら、黒川氏の事務所が、うまく稼働できなかった場合を考えて次の手を考えているようだが…。蒲は、天十郎と暮らす事が出来るように、必死に考えたな。なんと利己的発想だろう。
夏梅も天十郎もソファベッドの上でゴロゴロしながら、蒲の独演会を適当に返事をしながら、まともに聞いていなかった。
「どんな人種だよ。だから、なんだよ」夏梅は半分寝始めた。
「おい、まだ続くのか?終わったのか?」天十郎が久々に言葉を発した。
夏梅は天十郎に聞いた。
「ようは、蒲は何が言いたい。天十郎には意味がわかるの?」
「俺と入籍しろ、と蒲が言っている。わけがわからん」
天十郎はあきれている。
「なんと、回りくどい奴だ。デカマッチョはそれでいいのか?」
「バル乳がいいなら」
「そうか…。塁は反対しないかな?」夏梅が小さく言った。
そもそも、天十郎は、蒲と二人でこの家を出たがっていたが、僕が存在する限り、蒲にはそれが出来ない。天十郎が、この家がいやなら、天十郎だけが出て行くしかないのだが、そこをなんとかしようと、蒲が企んで提案している。
僕は蒲に向かって声を荒げた「蒲、もう辞めろ。夏梅がつらそうだ」
しかし夏梅と天十郎にまた再度しつこく迫った。蒲の面倒臭い行動に、二人ともうんざりして、適当に頷いている。
「決まったな」満足げだ。