第5話
文字数 561文字
僕は、マスターベーションしながらリザとの性的な妄想で自分の奥底にある感情を掘り起こしていた。それが正しいのか悪いことなのかはわからない。ただ、彼女を前にすると、自分が狂っているのではないかと思うこともあった。
卒業してから一度だけリザを見たことがある。
グレースランドで。女友達と三人で来ていた。ちょうどその時、僕もいたのだ。その時間帯に集まった20人ほどの観光客のグループで、エルヴィス・プレスリーの家の中を見て回った。その先頭にリザがいた。きらめくような笑顔がくっきりと見えた。夢のようだった。すぐそこに憧れのリザがいる。しかし、それは自分がまったくのダメ人間で、自分の無価値さを納得させるだけだった。僕の人生は、取るに足りない繰り返しの日々の連続だった。けれども、心は再び彼女に釘付けになった。彼女は記憶にあるよりさほど長身ではなく、どこにでもいそうな女友達二人に和らいだ笑みを浮かべながら何か話していた。僕は意識的にグループの一番後ろで、彼女に気づかれないようにしていた。
でも、彼女は僕のことを覚えていなかったから、隠れる必要なんてなかったんだけど、放浪者でしかない僕は、そうせざるを得なかった。
そして、昼の光の中を僕はドキドキしながら足早にシャトルバスに乗り、世界中で一番好きな人を置いてグレースランドを立ち去った。
卒業してから一度だけリザを見たことがある。
グレースランドで。女友達と三人で来ていた。ちょうどその時、僕もいたのだ。その時間帯に集まった20人ほどの観光客のグループで、エルヴィス・プレスリーの家の中を見て回った。その先頭にリザがいた。きらめくような笑顔がくっきりと見えた。夢のようだった。すぐそこに憧れのリザがいる。しかし、それは自分がまったくのダメ人間で、自分の無価値さを納得させるだけだった。僕の人生は、取るに足りない繰り返しの日々の連続だった。けれども、心は再び彼女に釘付けになった。彼女は記憶にあるよりさほど長身ではなく、どこにでもいそうな女友達二人に和らいだ笑みを浮かべながら何か話していた。僕は意識的にグループの一番後ろで、彼女に気づかれないようにしていた。
でも、彼女は僕のことを覚えていなかったから、隠れる必要なんてなかったんだけど、放浪者でしかない僕は、そうせざるを得なかった。
そして、昼の光の中を僕はドキドキしながら足早にシャトルバスに乗り、世界中で一番好きな人を置いてグレースランドを立ち去った。