第13話

文字数 623文字

シャトルバスを降りると、僕は何かに追われるように、自転車を買いに向かった。何度も振り返りながら、リザが別のシャトルバスで戻ってくるのを予感し、焦りが募っていた。そして自転車を買い、できるだけ目立たないようにしながら、一人で向かいの停留所をじっと見つめていた。時折、周囲を警戒しつつ空をぼんやり眺めていると、案の定、リザたちを乗せたシャトルバスがゆっくりと停留所に滑り込んできた。その瞬間、心臓が一気に高鳴り、まるで張りつめた弦が震えるように、内側から激しく鼓動が響いた。手が汗ばんで、息が詰まる思いだった。

バスから降りてきたリザは、サングラスで目元を隠していた。その下にどんな表情が潜んでいるのか僕にはわからなかったが、その存在感だけで全身が緊張でこわばるのを感じた。髪は肩にさらりと流れ、風が優しく揺らしていた。降りてきた客が散らばる中、僕はリザを目で追いかけた。彼女たちは三人とも時計を確かめ、最初に目に入ったバーに入り、30分ほどしてからタクシーに乗った。

僕はその様子を物陰からじっと見つめ、心の中で得体の知れない衝動に駆られていた。何か行動を起こさなければならない——そんな思いに突き動かされるように、自転車のペダルを漕ぎ出した。そしてリザの宿泊先を突き止めたとき、僕は自分が何をしようとしているのか、正直よくわからなかった。ただ、彼女に会わなければならないという思いが、その夜、僕を彼女の元へと向かわせ、あの事件を引き起こしてしまった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み