第7話

文字数 719文字

ショウの家は東京にあった。両親と暮らしており、閑静な住宅地にある大きな家だった。彼はまったく変わっておらず、昔のままだった。ショウの両親はある意味ではショウのことを知っていたが、別の意味では何も知らなかった。3歳年上の姉は16歳で結婚した。「ただ家から出たかっただけよ。ねえ、ここに家庭だと思える場所があるってすごくいいわ」と姉は言っていたが、その言葉は、家族の中に存在する見えない裂け目を浮き彫りにしていて、両親はきっと何か人生の大事なものが欠けているという結論を出したのだろう。

ショウは僕を決して自分の両親に会わせなかった。そうした考えを僕に明確に示していた。

ショウの親が知っているショウ、僕が知っているショウ、そしてショウ自身。これらはすべて異なるものだった。

彼は、人格と人格のはざまで暮らし、振り子細工のように揺れていた。おそらく、激しい羞恥心や繊細さがそうさせていたのだろう。だが、実際には、自己中心的な計算や冷徹な分析が彼をこのような状態に導いていたのかもしれない。

ある日の夕方、歌舞伎町を歩いていると、男が声を掛けてきた。

「60分3000円。キャバクラ、いかがですか?」

ショウが「ひょっとしてぼったくりじゃないよね?」と尋ねようとするのを遮るように、僕は言った。「60分3000円なら、試してみようぜ」

男は僕に微笑みを返し、案内してくれた。僕たちはその後、雑居ビルに入り、エレベーターで上に上がった。ドアを開けて中に入ると、男は「お客さまご案内!」と言い残し、再びエレベーターに乗り込んで店を去っていった。

店内には僕たちだけしかおらず、落ち着かない気分のまま、ショウは「これ、ヤバいな。ぼったくりじゃないの?」と僕に言った。
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