第17話

文字数 670文字

扉の方を見て耳を澄ませていると、突然階段を駆け上がる音が聞こえてきて、僕は凍りついた。慌ててバスルームに逃げ込んだが、次にどうすればいいのか全くわからなかった。上がってきた足音は向こうの部屋に入っていった。僕はリュックサックを抱え、低いバスタブの中にかがみ、シャワーカーテンを引いてじっと息を潜めた。すると、向こうの部屋から出た足音がまっすぐにこちらに向かってきた。ドアが開き、足音がすぐそばまで迫り、便器に座る気配がした。紙を巻き取る音がして、拭き終わった女が立ち上がると、次の瞬間、シャワーカーテンが引かれた。彼女は驚愕の表情を浮かべ、肩越しに震えながら叫んだ。

「ねえ! 誰か来て!」

彼女は再び僕の方に視線を戻し、冷たい目で見下ろしながら、低い声で言い放った。

「あきらめなさい」

頭の中が真っ白になり、すべてが終わったと思った。もう逃げ場はない――そう感じた。全身が硬直し、冷たい汗が背中を伝った。

だが、喉の奥からドナがささやいていた。「終わりじゃない」と。自分自身と対話しているような口調だった。

まるでドナの意志によって銃を引き抜かされたかのように、僕はリュックから銃を取り出していた。手は震えていたが、それは恐怖からではなかった。引き金を引いたときも、ドナが僕を導いているように感じた。銃声がバスルームを支配し、その音が反響する間、僕の身体はまるで別の誰かのもののように感じた。

そして、シリンダーが再び回転し始める。

血相を変えて飛び込んできたリザの友達の胸に、二発目を撃った。銃声とともに激しい耳鳴りを伴い、熱い風が僕の頬を焦がした。

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