第14話

文字数 658文字

一度ホテルに戻り、部屋の明かりをつけた後、バックにしまっていた拳銃を取り出した。持って行くべきか悩んだが、もしもの時のために威嚇の手段として持って行くことにした。なぜこんな拳銃を買ったのか、自分はそもそも争いを好むタイプではないのに、と自問自答し、気が引けて捨てようともした。

「けど、アメリカに来てジャップだとか言われることもある。そうすると、僕は無性に腹が立つ」顔の見えない場所からショウが言う。

そのため、僕はそいつらを撃ち殺してやろうという衝動に駆られた。殺さないまでも、足の指ぐらい撃ってやろうと考えていた。現金をポケットに突っ込み、リュックサックに拳銃を入れ、スナップをしっかりと閉めた。

そのまま部屋を出て廊下を歩きながら、メイドの清掃用具が入った台車が薄暗い空きスペースに置かれているのを見た僕は、そこにあったゴム手袋を持って質素なホテルのエントランスの裏手からウィンドブレーカーのフードで身を隠しながら、表に出て、自転車でロッジに向かった。

陸橋を渡っているとき、夏の夜空に放たれた火の矢が、無数の星を散りばめ、大きな光の輪を彩る花火がいたるところで、でかい音をたてて打ち上げられていた。下の黒いトンネルの入り口を見ると、オレンジの光が広がり、巨大なトレーラー・トラックが出てくるのが見えた。

ペダルをこぎながら花火で彩られた川や空を眺め、市街地から少し離れた木々に囲まれた山道を進んでいくと、道の先に静かなロッジが見えてきた。ロッジは古びた木造で、花火の光が周りの森とともに幻想的な雰囲気を作り出していた。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み