第13話
文字数 452文字
そんな秘密の幸せな時間は長くは続かなかった。
ぼくが小学三年生になったある日、別れは突然やってきた。
学校の帰り道によく見かけていたトムやエマ、ダニエルの姿がパッタリと見えなくなった。
基地内を観察していると、時間でのパトロールもないことに気がついた。
ぼくはランドセルを玄関に放り投げ、キッチンにいたお母さんに、背中から問いかけた。
「最近、基地の中が静かだよね」
「あら、おかえり。なによ突然に……びっくりしたなぁ。あぁ、あそこね、土地が日本に返還されたから基地内の米軍はアメリカ本土に帰ったんだって。いずれ整備されて学校とか公園とか国の施設が建つらしいわよ。まだ詳細は未定らしいけど」
「えーっ、じゃあもう誰も住んでないの?」
「うん、順番に帰国していって、最後の一人も帰国したらしいわよ。何年後かが楽しみだねぇ」
お母さんはぼくの事情を知らずに明るく教えてくれた。ぼくはお母さんの話を聞いて言葉にならなかった。目の前におかれた、おやつのホットケーキを見つめたまま、しばらく手をつけることができなかった。
ぼくが小学三年生になったある日、別れは突然やってきた。
学校の帰り道によく見かけていたトムやエマ、ダニエルの姿がパッタリと見えなくなった。
基地内を観察していると、時間でのパトロールもないことに気がついた。
ぼくはランドセルを玄関に放り投げ、キッチンにいたお母さんに、背中から問いかけた。
「最近、基地の中が静かだよね」
「あら、おかえり。なによ突然に……びっくりしたなぁ。あぁ、あそこね、土地が日本に返還されたから基地内の米軍はアメリカ本土に帰ったんだって。いずれ整備されて学校とか公園とか国の施設が建つらしいわよ。まだ詳細は未定らしいけど」
「えーっ、じゃあもう誰も住んでないの?」
「うん、順番に帰国していって、最後の一人も帰国したらしいわよ。何年後かが楽しみだねぇ」
お母さんはぼくの事情を知らずに明るく教えてくれた。ぼくはお母さんの話を聞いて言葉にならなかった。目の前におかれた、おやつのホットケーキを見つめたまま、しばらく手をつけることができなかった。