第7話

文字数 550文字

 その日のお昼は、ぼくの大好きなスパゲッティだった。コーラを一気飲みし、スパゲッティを口いっぱいに頬張った。
「ねぇ、お母さん。米軍基地の中ってどうなってるの?」
「さぁ、お母さんだって知らないわよ。なんで突然そんなこと聞くの?」
「いや、別に……家や住んでいる人が見えるのに、話すこともできないなんて、なんだか不自然な感じがしてさ」
「そうねぇ。アメリカ人は日本人より体が大きな人が多いから、ちょっと近寄りがたい感じがするわよね。それに言葉も通じないしね。特に不都合もないんだから、それぞれ静かに暮らしているし、何も問題ないんじゃないの?」
「うん、それはそうなんだけどーー」
「タカヒロ、何考えてるか知らないけど、間違ってもフェンスを乗り越えて敷地内に入ることだけはやめなさい。警察に捕まるんだからね」
「うん、わかってるよ。お母さん、フェンスの上にバラ線が張ってあるの知ってるでしょ?」
「そりゃあ知ってるけど……悪いことする人は、あんなバラ線なんか怖くないだろうからね」
そう言ってキッチンに戻っていった。
 そのとき、お母さんは、戦争のことや基地がそこにあることの理由までぼくには話してくれなかった。もし、大人の都合や国の事情がなければ、言葉なんて通じなくても彼らと友達になれるんじゃないかとぼくは思っていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み