第1話

文字数 551文字

 時は1973年(昭和四十八年)、十一月、よく晴れた日曜日。ぼくは小刻みな振動で目が覚めたた。
 ガタガタガタガターー
(地震か?……)
 寝ぼけたまま、体を半分起こして二段ベッドの下を覗いた。
 弟はもういない。
 時計を確認すると朝八時ちょっと過ぎだ。
(まだもうちょっと……)
 ぼくは布団にもぐりこんだ。
その瞬間、またガタガタガタガターーぐらぐらぐらぐらーー
 さっきより大きな揺れを感じた。

 ぼくは、ただごとではないとパジャマのまま
階下へ駆け下りた。

 いつも誰かいるはずの居間はテレビがついたまま。お母さんと弟の姿はみえない。
(様子がおかしい。いつもの日曜の朝じゃない……)
そう思いつつも、ぼくは我慢できずにトイレに駆け込んだ。
 とその時、玄関のドアが開いて
「タカヒロー」
お父さんの声が聞こえてきた。
「はーい。いま行く」
用を足し、手洗いもせず、サンダルをひっかけてパジャマのまま外へ出た。

 我が家はバス通りに面した一軒家だ。利便性がいいからと一年前にお父さんが購入した。
 その砂利道のバス通りを土埃をあげながら、すごい勢いで目の前を戦車が通り抜けていった。しかも一両や二両ではない。次から次へと、物々しい列だ。
「お父さん、何があったの?」
「今日は自衛隊の観閲式なんだ。戦車が目の前で見られるってすごいだろう」
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