第4話

文字数 631文字

 新潟に住んでいた頃は、祖父母の他にも従兄弟もいて、とても賑やかだった。同じ砂利道でも家に続く杉並木の砂利道は、たまに近所の軽トラが通るくらいの道で、暑い時期には、蝉時雨が心地よい、田舎らしい道だった。

 だから、埼玉県に引越してきたぼくは
(騙されたーー)と思った。
 ぼくの頭の中には完璧な未来都市が出来上がっていたからだ。

 小学校一年生の頃は、集団で通う友達がいなくて、お母さんが途中まで送ってくれていた。半年もすると次第に子供が増え、集団登校ができるまでになった。越してきて一年過ぎた頃には、騙されたと感じた気持ちは自然に消えていった。
 学校でたくさんの友達ができたからだ。

 登校は団地の南側を班を作って歩道を歩いて行く。ただし、下校はそれぞれなので、登校と同じ道を帰るというルールがあった。でもぼくの場合は、一年生の頃から団地の友達と一緒に帰ることが多かったので、一人のときでも団地の北側、つまり玄関口の道を通って帰っていた。

 五階建ての棟が十四棟も一列に並んで建っているのだから、夕方ともなると影ができて道が暗い。
 団地の敷地内の道は、歩道と車道はあるものの、ほぼ団地の住人しか通ることがないので、下校時間でも人通りの少ない場所だった。
 ぼくは一人で帰る時も表通りを通らずに団地内の道を選んで下校した。アベリアの花壇脇の誰もいない道を歩いて帰るのが大好きだった。甘い香りと対照的な道の寂しさとーー
 ちょっとスリリングな感じがするその道がぼくは大好きだった。
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