第18話
文字数 600文字
空き巣被害から数日の間、ぼくたち家族は家の片付けに加え、銀行の手続きやら、その他、役所の手続きなど、ショックで落ち込んでいる暇などなく、忙しく動き回っていた。幸いにも銀行の預貯金は無事だったため、ぼくたち家族は、その後の生計をなんとか立て直すことができた。
お母さんは現金が盗まれたことより、ぼくが七五三をした時の袴の衣装が盗まれたことにとてもショックを受けていた。
「あの袴はばあちゃんがタカヒロの為に買ってくれた大切なものだったの。亡くなったばあちゃんが笑顔で写っている写真も一緒にしまっておいたから悔しくて仕方ない。たった一枚の家族写真だったのに……」
そのばあちゃんは去年、他界している。
それまで気がつかなかったが、この小さくて狭い家の中に、それぞれに大切なものがあって、他人からしたら、そんなものーーというものでも、その人にしてみたら、心底、大切なものーーというものがあるのだなーーということがわかった。
普段はそんな思いは口にしない。だけど、人が生きていくうえで大切なもの、心の支えとなるものは、どんな事情があろうとも、盗んだり壊したり、心のように目に見えないものだとしても危害を加えてはいけないものだと思った。
ぼくは中学生にして大切なものを無くしてしまった。今までは手にすることができた思い出の箱は、本当に目に見えないただの思い出として、この先ぼくは生きていかなければならないのだ。
お母さんは現金が盗まれたことより、ぼくが七五三をした時の袴の衣装が盗まれたことにとてもショックを受けていた。
「あの袴はばあちゃんがタカヒロの為に買ってくれた大切なものだったの。亡くなったばあちゃんが笑顔で写っている写真も一緒にしまっておいたから悔しくて仕方ない。たった一枚の家族写真だったのに……」
そのばあちゃんは去年、他界している。
それまで気がつかなかったが、この小さくて狭い家の中に、それぞれに大切なものがあって、他人からしたら、そんなものーーというものでも、その人にしてみたら、心底、大切なものーーというものがあるのだなーーということがわかった。
普段はそんな思いは口にしない。だけど、人が生きていくうえで大切なもの、心の支えとなるものは、どんな事情があろうとも、盗んだり壊したり、心のように目に見えないものだとしても危害を加えてはいけないものだと思った。
ぼくは中学生にして大切なものを無くしてしまった。今までは手にすることができた思い出の箱は、本当に目に見えないただの思い出として、この先ぼくは生きていかなければならないのだ。