愛とは

文字数 1,805文字

電話に出て、ちゃんと話をしなくちゃって真剣な私。

咲知「もしもし?」

ジンヤ「何だよ心配させやがって。何で何度も電話したのに全然でねーんだよ」

咲知「それはジンヤのせいじゃんか」

ジンヤ「お前怒ってるんだ」

咲知「もちろんですとも。あんな事されたんだもん。ショックで死んじゃうじゃん。ジンヤのバカ!」

ジンヤ「悪かったとは思ってるよ。お前傷つけたんだもんな」

咲知「ジンヤの事好きだもん。ホント傷ついた」


そこで私は言葉を止めたけど、でも話を続けた。
重苦しいながらもドキドキと自然と起きた動悸を抱えながら。

咲知「ねえ、ジンヤ。私の事好き?」

ジンヤ「もちろんだろ。お前とは別れねーから。だけど、お前に話したいことがあるんだ。」

咲知「えっ?話って?」

笑顔に戻りかけていた私だったけど、
その暖かさは止み、また急に重苦しさが心に広がった。



次の日、ちゃんとキャットシュガーに顔を出した私。

だけど夜の7時には上がらせてもらいジンヤの部屋に向かった。

昨日、電話であの後合う約束をしていた。

ジンヤがバイトに行く前、話そうって事になってた。

いつもより、ちょっと可愛目な服を着て。

髪はふわふわにカールさせて、ピンクの猫のプリントのワンピースに白いニットカーデを羽織って。

ワンピはキャットシュガーのイメージにぴったりだからって千紗都が何枚も買い付けてきた中の一枚。

可愛い服の方が縁起が良いかなって思って着てみた。


ちょっと怖がりながらだけど、階段を登ってジンヤの部屋まで行き、中に入ると、
ジンヤは「待ってたよ」って言ってジャージどデニムで上目使いでソファに座ってた。

「ねぇ、ジンヤ好き」会ってすぐだけど
ぎこちなくも募る思いを言葉で伝えてドキドキしながら
ジンヤのすぐ隣に座って寄りかかるように抱きつくと
「分かってるよ」って言って真剣な顔つきながらも
優しく髪を撫でてくれた。

そのまま暫く過ごして
「なぁお前俺の話聞いて」ってジンヤが座り直して静かに言った。
「...うん。」って私も座り直し、大人しく頷くように言った。


それはスミレについてのジンヤの話だった。



「オレ、アイツの事放っておけなかったんだ。

俺がアイツにはじめて会った時
アイツは荒れた貧乏生活で街で行き倒れかけてて。

そんなだけど気が強くて元気が人一倍あって無邪気に笑ってるアイツがなんか好きで。

俺が声掛けて家に泊めてやって、そのまま暫く一緒に暮らしてたんだ。

はじめは盛り上がってて楽しかったけど

俺が家空けることが多くて、寂しく思ったらしくて機嫌悪くされて口喧嘩の言い合いがすごくて。

それも続くとついに愛想が尽きたっていうのか、『別れよう』って話になって。

だけど、3日前久しぶりにスミレに会って、

『あの時はホントゴメン』って素直に謝ってくれて。

それで今でも俺が好きって言って、『このまま私を捨てないで』って泣き付かれちまって。

泣くの辞めるように言ったけど、全然泣き止んでくれなくて

困って部屋に連れてったんだ。

それでお前の事今の彼女だって話したらもっと泣き付かれてさ。

やっと泣き止んだら、帰るように言ったんだけど

、聞いてくれなくて俺にアイツから抱きついてきたんだ」


って話した後、

「お前が潔癖症ならホント悪かったって思う。それでも、
咲知はまだ俺の事好きだよな?」

って言って、私を見つめたジンヤ。

「さすがにちょっと傷付いたけど、でもジンヤの事ちゃんと大好きだよ。」

って私はジンヤを見つめ迷わず言った。

それでジンヤにまた抱きついた。

もう離したく無いよって思いながら切なくなりながら。


そして「ホントお前って可愛いな」ってジンヤは言った。

やけに嬉しそうなジンヤが気になったけど、

そのまま一緒に入れることが嬉しくて、そんな事そんなに気にしなかった。


スミレと抱き合ってたのはわざとだったのかな、私の感情的な所が見たくてわざとだったのかもって後で思ってもみたりした。

ひょっとして、攻め好きなイタズラなサディストがジンヤでも

ロッカーで燃える赤毛のジンヤならホントそのまんまじゃんって思えるだけ。

どうか私をそんなに泣かせたりしないでって若干末恐ろしくも思いながらも。

前よりもジンヤに夢中な私は確かに今の私だった。

酔っているかのように火照っているかのように。


そのままジンヤの部屋に泊まって明け方バイトから帰ってきたジンヤとは抱き合ってそれで、
ジンヤと眠りにつき、次の朝見たジンヤの寝顔に愛しさを覚えながら私は仕事に出掛けた。
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