どうして...

文字数 780文字

その日ジンヤの部屋まで行ってみた。

お店であんな事があったから、ジンヤと話がしたくて、それで。

今日はバイトが休みだって言ってたから、お店を締めてから、
9時頃、
ジンヤの部屋へ向かった。

静まり返って暗い中、階段でタンタンッて足音が響く中、

2階の部屋のところまで来て、合鍵を取り出した。
そしてガチャリとドアを開ける。

さっき電話をかけたけど、出てくれなかったけど、

そういう日は大概寝てるかお風呂に入ってるかだから気にも止めず、
部屋に入っていく。

だけど、玄関のところでいつもと様子が違うのに気づいた。

ジンヤの声がするのと同時に女の人の声がする。

なんだろって一瞬不安に思ったけど、

それでも躊躇わず、
リビングへのドアを開けた。

そこで私は言葉を失った。


女の人がジンヤに抱きしめられている。

立ったまま、ジンヤの両腕の中で、長い髪を乱しながら。


「嫌ー!!嘘でしょ!?嘘だって言って!!」

って私はありのまま声にした。

それで、ジンヤと腕の中の人は私に気が付き顔をこっちに向けた。


「あっ!」
「あっ!!」

目があって、何かに気がついて、それで女2人同時で驚いた。

その人は今日キャットシュガーで会った自称ジンヤの元カノだったから。


「咲知っ!. ..スミレ?」

私に気づいて私の名を呼んだジンヤの腕をすり抜けてこっちに向かってくるのはスミレって名前なのか、ジンヤにそう呼ばれた。

スミレが目の前に立って私に何か言っているようだったけど、その言葉は頭には入らずうつむき、頭を抱えこんで、

「私、帰る!!」

って大声で言って、それで身を返して駆け出した。



「咲知!ちょっと待てよ!」って動揺したように呼び止めるジンヤの声がしたけど、ジンヤの部屋を飛び出してしまった。


目に涙を浮かべながらショックを振り切るように一心不乱に、暗い夜の街をただ走った。


その時、季節外れの雪が少し曇った星が少ない空から舞い降りていた。
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