第18話:リーマンショックの後始末2

文字数 1,522文字

 GSE「米国で住宅や農業関連の政府後援企業」が住宅や農業の分野で融資や債務保証で資金を提供したり円滑化をはかっている。ファニーメイとフレディマックは主に住宅ローンの組成者から買い取ったローンをパッケージにし証券化し保証をつけて流通市場で売却する証券化事業と自ら住宅ローン関連証券や他の資産に対する投資を行うポートフォリオ事業の二つの事業を通じ米国住宅金融市場を支えてきた。

 ファニーメイとフレディマックは、それぞれ、1970年、1988年に民営化されニューヨーク証券取引所に上場し民間会社となった。しかし、市場では、「暗黙の政府保証」があるとの認識を持たれてきており、両社は、こうした「暗黙の政府保証」を前提とした高い信用力を背景に低コストでの資金調達を行ってきた。

 また、ファニーメイとフレディマックの両社については、法定の最低自己資本比率が低い水準に設定されていたことから、1990年代後半以降の長期にわたる住宅ブームの中で、両社は高いレバレッジでバランスシートを急速に拡大させてきた。この結果、2008年6月時点でGSEやGSE等による住宅ローンのプールが保有する住宅ローン残高の合計は5兆ドル「約460兆円」を超えていた。

 しかしながら、サブプライム住宅ローン問題に起因する住宅市場の調整の影響が両社が保証の対象とするプライム層向けの貸出しにも広がり両社の財務内容に影響を及ぼすようになった。すると、こうした高いレバレッジ、すなわち資本の不足に対する懸念が高まり、最終的には、単なる「暗黙の政府保証」では、経営不安が解消しない状態となった。

 また、両社が発行した債券「エージェンシー債」については、中国、日本を始め世界各国の金融機関によっても保有されていたことから、仮に、両社が破綻すれば、国際金融市場にも多大な影響を及ぼすことが懸念された。この状況を受けアメリカ政府は、両社に対する「暗黙の政府保証」があるとの認識をもたせるような曖昧を放置した責任を認め両社に対する救済策に乗り出すこととなった。

 救済策では、両社を一時的にFHFA「連邦住宅金融庁」の管理下に置く事。それと共に1つ目として両社が債務超過にならないよう財務省が必要に応じて各社最大で1千億ドル、合計で最大2千億ドル「約19兆円」の優先株の買取り「資本注入」を実施する。2つ目として、財務省が流通市場で両社発行の住宅ローン担保証券「MBS」を買い取る。

 3つ目として財務省がGSEに対する信用制度を創設することなどが盛り込まれた。こうした救済策は、両社が金融市場に引き起こすシステミック・リスクを回避する観点から必要不可欠なものであるとともに、低迷する住宅金融市場を下支えする上でも一定の効果を持つものであると考えられる。しかし、今回の救済策では、住宅市場における両社の長期的な役割については、今後に判断を委ねることとされた。

 GSEをめぐる問題の本質は、両社が民間企業としての株主の利益最大化と持家政策の推進という公的使命の追求という、相矛盾する目的を抱えてきたことであり、この部分についての解決なくしては、今回の救済策の期限である2009年末以降、再び同様の困難に陥る可能性がある。 今後のGSEの在り方については、様々なオプションが考えられた。

 しかし、低所得者向けの住宅取得支援等の公的機能を担っていくにしても、一民間会社として、他の民間金融機関と同じ土俵で競争していくにしても、両社の住宅金融市場に占める規模はあまりに大き過ぎると言える。したがって、GSEについては、将来的な分割や規模縮小の議論を含め、その在り方についての議論が進められていくと考えられる。
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