第22話:新型ウイルス感染の拡大

文字数 1,576文字

 同時に出港時から2月3日まで発熱または、呼吸器症状を呈していた人とその同室者に対し口腔咽頭スワブ検体を採取した。一部の検査結果が2月3日に判明し、31人中10人で新型ウイルスが検出された。クルーズ船DP号は船員、乗客、各8の合計16デッキに2名部屋を基本とする部屋があった。そこに世界57カ国から船員1068人、乗客2645人の計3713人が搭乗していた。

 その後、4月15日までに確定症例712例が確認され、少なくとも14例の死亡が確認された。また、その他に検疫官や船会社の医師ら外部から対策に入った9人の感染が確認された。感染の広がりについて2月3日の検疫前に一定数の感染者が複数デッキで発症した。感染が検疫前に、ほぼすべてのデッキの乗客間で起こっていたと推測された。

 乗客の新型ウイルスの曝露機会は、隔離前の船内パーティにおける接触飛沫による新型ウイルス感染が一つの可能性として挙げられた。検疫時に、ほぼ全員が新型ウイルスに曝露していた可能性があったため、乗客全員を濃厚接触者と考えて隔離をしたことは妥当であったと考えられた。また、食事担当スタッフの感染も既に隔離前のパーティで給仕した際に感染していた可能性があると考えられた。

 クルーズ船DP号での新型ウイルス感染事例は、規模や感染症の性質から過去にない未曽有の事件であった。初期対応の課題には、災害対応体制の早期構築と指揮系統の明確化、情報集約とデータベースの一元化、感染事例の迅速な記述疫学、不慣れな人が多い中での感染管理の徹底。さらに全体対策本部と現地対策本部との円滑なコミュニケーション、適時、適正な対外情報の発信が挙げられた。

 今後、万が一同様の事例が発生した時は、このクルーズ船の経験を活かして迅速に対処する事が重要だと考えられた。2月13日には、新型ウイルスによる感染症で神奈川県に住む80代の女性が死亡した。日本国内で新型ウイルスの感染者が死亡したのは、初めてとなった。3月15日、政府はマスクの転売を禁止する政令改正案を閣議決定し当日から施行された。

 新型ウイルスの流行で供給量不足となったマスクをインターネットオークションなどで高額転売の横行が問題となった。3月18日、2018年に発生した森友学園問題で公文書改竄「かいざん」の強要を苦に自殺した財務省近畿財務局の職員の手記を遺族が公表された。3月24日、新型ウイルスの世界的流行に伴い、本年夏の開催を予定していた東京オリンピック・パラリンピックについて1年程度の延期が決まった。

 3月25日、国内で第5世代移動通信システム「5G」がサービスを開始した。3月29日、ザ・ドリフターズのメンバーでタレントの志村けんが新型ウイルス感染症に伴う肺炎により70歳で死去した。4月8日、国内で第4の電気通信事業者「通信キャリア」となる楽天モバイルがサービスを開始した。4月20日、国民1人当たり10万円の特別定額給付金支給を含む新型ウイルス感染症緊急経済対策が閣議決定された。

 この事業については経済産業省がサービスデザイン推進協議会に769億円で委託し電通に749億円で再委託されたため、大規模な中抜きが問題視された。刀根紳一は、4月23日、女優の岡江久美子が新型ウイルス感染症に伴う肺炎により63歳で死亡。刀根紳一は、3月の志村さんと4月の岡江さんの新型ウイルス感染症による死で国民も感染症への恐ろしさを痛感した。

 5月7日、新型ウイルス感染症の治療薬として抗ウイルス薬レムデシビルが承認された。通常は医薬品の承認申請から実際に承認されるまでは1年程度を要する、しかし、今回は、医薬品医療機器法の特例承認の制度を使い、申請からわずか3日というスピード承認となった。さらに多くの人達が新型ウイルス感染症の恐ろしさを思い知らされた。
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