ベランダ

文字数 410文字

全てが終わった夏の日は
山々が遠くに広がっている
燃える風景は懐かしさをまとい
ただ傷ついた心が蘇ろうとしていた
ベランダから見るありきたりな花火が
続いていく風景をただ映していた
ひび割れた感情の先にあるのは
緑の葉を付けた木々だった
現実が遠くからやってくる
歪んだ思いは今でもわずかに
火花を放っていた
抽象的な絵画のような
風景はもう二度と見ることがないかもしれない
火種は激しく火花を散らした
河原の光景が蘇っては消えていく
今はもうなくなった残骸が
未だに落ちていく
神経質な響きが通り過ぎていく
家々の屋根がずっと先まで並んでいるけれど
その中にある悲しみはきっと
無数に散っていくだろう
僅かな恋の幻影が浮かんでは
空の星のように遠くへあるままだ
今はもう慣れ切った
平穏の影を憎んだこともあったが
ただテーブルが並んでいるだけだった
何もない空間が生まれて
静かに月が輝きを放つ
花火はいつの間にか終わっていた
火花の残骸は煙となって
空に溶けてしまったのだろう
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