ウイスキー

文字数 289文字

ウイスキーの酔いは
些細な殺意を帯びて
グラスの氷がカラカラと鳴るが
それは憎しみを増長させる
静寂の部屋の中に
時折、情報が含まれて
アルコールが体中に回っていく
目を閉じると人々の視線に刺され
よりいっそうくらくらした
部屋の中のクーラーが
夏の到来を告げている
ナイフがあったら一気に
気が済むまで刺し続けたいと
空想をしていると
電話が鳴ったが
それは誰でもなかった
話す相手はどこにも存在しない
いつの間にか
煙草に火をつけていた
音楽が聞こえると
平穏が訪れる
揺らいでいく感情が
跡形もなく消えていった
微かな響きで
現実に引き戻される
疲弊した体を
煙が突き抜けていく
思い出せる記憶の中には
懐かしいものは一つもない
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