井戸の中

文字数 251文字

歩いて行った先には
絶望の水が
飲み込まれていくと
淡い光に見えた
過ぎ去った日々が
少しだけ蘇り
僕は夜空を見ていた
芝生の上の
どこまでも続く平原が
目の前に現れて
消えていく自分が
カメラのように
風景を映していた
過ぎ去ってしまえば
きっとどこかへ向かって行くはずだと
自分に言い聞かせながら
嫌な音がする
井戸の中を覗き込んだ
それは好奇心で
忘れた思い出で
消したかったものだった
丸い輪郭は
ずっと奥まで続いている
その時、あの時の淡い光が
ぼんやりと底に浮かんでは消えていく
過ぎ去ったものは
確かにそこにあった
同時にそれらは消滅していた
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