夏の河原

文字数 307文字

線香花火はぼんやりと
夜の暗闇の中に浮かぶ
傷ついた瞳には
赤い光が反射する
あなたのことを思い出しながら
川の水面を眺めた
失われていく時間は
また蘇ろうとしていた
過ぎてみれば
夏の熱気は懐かしさをはらんでいる
辺りに吹く風が
際限なく体を通過していく
あなたは今どこにいるのか
それだけを頼りに
火花はばちばちと飛び散った
光は消えてはまた新たに生まれる
淡い憎しみの中には
優しさが同時に含まれていたかもしれない
静寂に包まれた空間の中に
火花が燃える音が響く
長い沈黙の中に
意識が溶けていく
記憶の中にあるものが
パズルのピースのように
少しずつはまっていく
火種はぽとりと落ちた
疲れ果てた体が
この地上に残っている
新たな花火に火をつける
目には涙が滲んだ
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