夏の時間

文字数 331文字

オフィスの窓から見る雨が
降り続く憂鬱のように
話すことを失い
ただ時間が消えていく
パソコンの画面の無数の点滅
同僚の話し声が
散らばっていく落ち葉のように
合間の喫煙室の煙が
胸を締め付ける
死んだあなたへの記憶が
夏の情景をまとっている
八月の海と砂浜
僕らは一緒にいられないと
思っていたのは幻影だったのか
繰り返す日々の中で
夏の熱が激しく降り注ぐ
それは痛みを帯びて
ガラスが割れていく
煙草が消えていくので
新しい火をつける
夏と冬が同時に存在して
揺らめいている
時々、思うことは静かに霧散していった
放置された自転車が
雨に濡れて
いつか錆びてしまう
熱と冷たさがあなたの輪郭を
形作っている
もしかしたら幻の風景かもしれないと
思った時、悲しみがやってくる
もはや後悔すらもわからなくなり
時間は巻き戻る
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