夏の花火

文字数 289文字

結局欲しかったのは
空に浮かぶ花火ではないが
赤い光が空に弾ける
河原の喧騒が
鈍い感情を蘇らせる
そこは違う世界で
ピエロのように踊るしかないとしても
人々は通り過ぎていく
花火は相変わらず
無関係に弾けていくが
一瞥しただけだった
記憶の中のあなたが
そっと声をかけるような
歪んだ愛着と
理性で守られた
嘘を吐き続ける
穏やかに揺れる雲は
視界の中にすら入ってこなかった
草の匂いが
ゆっくりと体を蝕んでいくように
話をする影が
不安を生じさせた
破壊と滅亡のストーリーが
妄想の中で
静かに消えていく
中心はおそらく壊れているから
周囲に導かれて
揺らめいていく世界
でも現実は続く
何も残さないで
死んでいく季節は終わっていった
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