線香花火

文字数 296文字

喧騒から離れた
ナイフのない河原で
線香花火に火をつけ
昨日の心に浮かんだものが
火種となって
バチバチと飛び散る
暗闇の中を
赤い火花が照らしている
誰もいないから
街中の視線に刺されるよりは
溶けていく風景に依存する
ぽとりと火種は落ちて
地面の上で静かに消えていった
目の前の木々の葉が
風に吹かれて落ちていったけれど
全ては混乱していて、歪んでいる
記憶の中の線路の情景が
時々、浮かんでくる
バケツの中の水は
黒く濁っていた
ポケットからキャンディーを出して
煙草に火をつけて
涼しくなった夏の風を感じる
今はもう失った風景が
ドアを叩き続けている
いつか訪れる静寂は
今でも地上に引き留めていた
空には月が浮かび
穏やかに雲が流れていく
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