逃避行

文字数 278文字

火花が消える空に
線香花火が揺らめいていた
夏の夜の空に浮かぶ雲
月が大きく輝く
弾ける火花は
感情を投影し
長い時間が蘇る
川の流れる音が
無数の光になる
それはなくした残骸で
長い間そればかりに
囚われていたように
光のある場所を求めて
虫たちが暗闇の中を
飛び回っている
時々人々が通り過ぎていくが
視線はきっと届かず
沈黙が静寂を埋め尽くす
街灯の光が照らす
アスファルトと草むら
それは通り過ぎていく後ろめたさを
少しだけ忘却させていく
スカートの影が
散らばっているように見える
いつの間にか
火種は地面に落ちて
探しても
暗闇に消えてしまった
ライターの煙草の匂いが
逃避行を鮮やかに塗りつぶしていく
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