(二・六)サンタクロース

文字数 991文字

 画面が替わりました。雪景色です。雪が降る冬のヨーロッパの、何処かの街のようですね。キリスト教の教会の前にある広場に、大きなクリスマスツリーが飾られています。子どもたちがこしらえた雪だるまも並んでいます。どうやらクリスマスイヴのパーティのようです。広場にはたくさんの子供たちが集まってきました。
「みんな、教会の子どもたちなの?」
 健一がよろこびさまに尋ねました。よろこびさまが答えます。
「いいや、違うんだよ、健一くん。この子たちはね、家が貧しかったり、住む家がなくて施設で暮らしている子どもたちなんだよ」
「へえ」
「教会がクリスマスパーティを催して、そんな子どもたちを招待したのさ」
「世界中の教会の人たちも、やっぱり偉いんだね」
 大人がサンタクロースやスノーマンに扮して、子どもたちを喜ばせます。みんな嬉しそうに、にこにこはしゃいでいますね。テーブルにはご馳走とお菓子が並べられ、野外用の暖炉に薪がくべられ、とても暖かいです。
「さあ、みんな。召し上がれ」
 シスターの合図で、みんなで手を合わせます。
「いただきまーす」
 にこにこ元気に、料理を頬張る子どもたち。キラキラとクリスマスツリーの飾りが星の光のように輝いて、とってもきれいです。
「ほら、プレゼントだよ」
「ありがとう」
「きみもどうぞ」
「うわあ、サンタさん大好き」
 サンタクロースが子どもたち一人一人にプレゼントを配ります。子どもたちの弾ける笑顔が眩しいですね。
「みんな、嬉しそうだね、よろこびさま」
 健一もワクワクしてきました。
「そうだね、健一くん。みんな、幸せそうで良かった、良かった」
 よろこびさまも満足そうです。

「ねえ、よろこびさま」
「何だい、健一くん?」
 いつのまにか画面は、よろこびさまの顔に替わっていました。よろこびさまはにこにこ嬉しそうに、白い髭を撫でています。健一は画面に向かって問いました。
「よろこびさまはいつも、あんな子どもたちの笑顔や、大人の人たちの美しい祈りの姿を見たり、世界中の人たちの元気な笑い声を聴いているの?」
「勿論だとも、健一くん」
「わあ、いいなあ」
 健一は羨ましくなりました。よろこびさまって、とっても面白そう。
「ねえ、よろこびさま。ぼくにも、よろこびさまだったら務まりそう」
「そうかい」
「ねえ、ぼくと交替してくれない?」
 図々しい健一に、よろこびさまは大声で笑いました。
「ハッハッハッハッハ」
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