(二・一)よろこびさま登場

文字数 818文字

 あーあ、かなしみさま、いなくなっちゃった。ふわーっ……。
 健一は大欠伸。時計を見ると、もう午前零時になろうとしていました。
 あっ、もうこんな時間だ!
 健一はビックリしました。もういつのまにか真夜中です。欠伸するのも当たり前ですね。
「かなしみさま、ぼくもう寝るよ」
 何処にいるのか分からないかなしみさまに向かって、健一は宣言しました。
 すると返事をするようにまっ暗だったノートパソコンの画面が、パッと光りました。
 あれっ?
 眠気が吹っ飛んだ健一は、画面をじっと見つめました。そこにはおやおや、またひとりのおじいさん、つまりサンタクロースのようなかなしみさまの顔が映っていました。
「どうしたの、かなしみさま?」
 健一が尋ねると、かなしみさまはにこにこ楽しそうな顔で答えました。何がそんなに楽しいのでしょう?健一にはわけが分かりません。
「やあ、健一くん。今度はね、かなしみさまじゃないんだよ」
「え?かなしみさまじゃないって、どういうこと?」
 ますますはてなマークで頭がいっぱいの健一です。相変わらず、嬉しそうに答えるかなしみさま。
「今度はね、よろこびさまなんだよ、健一くん」
「よろこびさま?」
 健一はビックリしながら、大声で言いました。
「でもやっぱり、変な名前……」
 健一の反応に、かなしみさま、いいえ、よろこびさまは大声で笑いました。
「ハッハッハッハッハ」
 そしてよろこびさまは続けました。
「さっきまではずっと、かなしいことばかり見てきたよね、健一くん」
「うん。ぼく、とってもかなしかった」
 しょんぼりした健一を励ますように、よろこびさまは言いました。
「でもね、この世界には嬉しいこと、楽しいこと、つまりよろこびだって一杯あるだろ」
「うん、そうだけど」
「だからそんな時のわたしは、かなしみさまからよろこびさまに早変わりするんだよ」
「へえ、そうなんだ」
 なんだか分かりませんが、健一も明るい気持ちになってきました。
「なんだか、おもしろそう」
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