(四・二)公園

文字数 880文字

 朝の光に包まれた健一の町。ノートパソコンの画面は、町の公園を映し出しました。
「あっ、港町公園だ。ぼくが小さい頃、いつも遊んでた公園なんだよ、よろこびさま」
「そうだったね、健一くん。おや、こんな朝早くに、誰か来るよ」
「あっ、ゆう子さんだ」
 健一の家のお隣りに住むゆう子さんは、早朝から犬の散歩に来たのでした。今朝は朝陽の中でにこにこ、にこにこ、とても楽しそうですね。失恋して雨の中で泣いていた、あのゆう子さんとは別人のようです。連れられた白い仔犬も、尻尾を振って元気に駆け回っています。
「ロクちゃん、待ってよ!」
 無邪気に仔犬の名を呼びながら、ゆう子さんも公園を駆けてゆきました。
「あゝ良かった。ゆう子さん元気そうで」
 健一もほっと一息。爽やかな朝の風がゆう子さんと仔犬を包み込んで、とても気持ち良さそうです。

 でもゆう子さんと仔犬ばかりではありません。公園に住みついている野良猫たちだって、元気ですよ。木の枝にとまっている小鳥をつかまえようとして、大きくジャンプする野良猫。でも小鳥たちの方が素早く、さっさと逃げてしまいました。今度は木の高いところでピヨピヨピヨと歌い、美声を聴かせてくれます。公園のベンチに腰掛け、耳を澄ませば、丸で天国にいるようですね。
 それから公園には、季節毎にたくさんの花が咲いています。
 春は桜、菜の花、たんぽぽ、つつじ……。
 夏には、紫陽花、くちなし、向日葵が咲き、木にとまった蝉が元気に鳴いています。
 秋になればコスモス、竜胆(りんどう)、金木犀……。金木犀の甘い香りが公園を包み込み、草の中では虫たちが美声を聴かせてくれます。
 冬。白い雪の中で梅や椿が花を咲かせます。水仙が咲き、福寿草の芽も土から顔を出します。
 そしてまた春が巡ってくるのです。
 公園の前の道路は通学路になっていて、健一と同じ小学校の生徒たちが元気に通学しています。そんな子どもたちを事故や悪い大人から守ろうと、近所のおじさん、おばさんたちが協力して見守っています。ありがたいですね。子どもたちに、にこにこ手を振るおじさん、おばさんの笑顔が、とても素敵です。
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