第22話 決闘の三重唱

文字数 1,077文字

第7場
一人の男が、家から出てきます。

自分の留守中に起こった出来事を知り、怒り狂ったヴァランタンです。


目の前には彼の知らない男が二人。

ふざけたセレナードを歌っていたのは、こいつらです!

どういうつもりだ、あんたらは?
失礼、我が友よ!

だけどあれはあんたのためのセレナードじゃありませんぜ

俺の妹なら喜んで聴くだろうがな
言うなりヴァランタンは剣を抜き、メフィストのギターを真っ二つにします。

傍らで息を呑むファウスト。

い……妹だって?!
何がお気に召さんのです?

音楽はお好きではありませんかな

侮辱はたくさん、たくさんだ!

俺の不幸、俺の恥辱。お前たちのどちらに俺は落とし前をつけなければならないんだ?

俺の手で倒さなければならないのはどっちだ!?

やる気ですかな?
怖気づいているファウスト。

しかしメフィストは彼をけしかけます。

さあ博士、やっちまいましょうや
おお神よ

俺の力を、俺の勇気を

力付けたまえ


こいつの血で俺の恥辱を雪ぐことを

許したまえ

恐ろしくて、震えて、

私は凍りつくようだ。


私が恥辱を与えたこの兄の血を流さねばならないのか

脅すような態度も、無茶苦茶な怒りも

オレにはお笑い草さ。


嵐が襲いかかってきても、オレの巧みな腕が逸らして見せるぞ

怒り狂ったヴァランタンは、胸の聖なるメダルを外します。

速くなっていく音楽が、彼の怒りを表します。

戦いの日々、守ってくれたお前

マルグリートがくれたお前

呪われたメダルめ、もうお前の助けなんか必要ないぞ

とうとうメダルを放り投げるヴァランタン。
後悔しますよ
決闘かぁ。ファウストはお酒のせいで正体不明になってるし、何より気が進んでいないみたい……

こりゃ勝ち目はないよ

だけどファウストには悪魔が味方してるからな。

だいたいこの兄貴も、いかにも血の気が多い感じじゃん。こっちはこっちで駄目だよ

仕方なく剣を抜いたファウストに、メフィストがささやきます。
私のそばへ、しっかりとな!

博士、私がお守りしますよ

すかさず、ヴァランタンが剣で突きを入れてきます。ファウストは応戦せざるを得ません。


四度目の剣戟で、メフィストが魔法でヴァランタンの剣を跳ね飛ばします。勢いでヴァランタンを突き刺してしまうファウスト。

(胸を押さえて)

うっ……

ハア、ハア……

(や、やってしまった)

英雄殿は砂の上に倒れましたな。

さあ、逃げますぞ!

メフィストは呆然とするファウストを引きずって逃げていきます。
二人の男+悪魔による「決闘の三重唱」。

怒りに震えるヴァランタン、怖気づくファウスト、嘲笑しつつ二人をけしかけるメフィストの三者三様の歌が重なります。

こちらの動画の前半部分が今回の内容です。

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