第25話 ブロッケンの谷と牢獄

文字数 1,087文字

サバトの饗宴に加わり、美女たちに囲まれてうっとりとしているファウスト。

杯を手にしており、傍らに現れた幻影には気付きません。

……(サイコーだぜ)
そんなファウストを見て、メフィストはニヤリ。
お前の陶酔

おお快楽よ

あの心から悔恨を奪い取ってしまえ!

でもこの時、ふとファウストの目にマルグリートの幻影が飛び込んでくるのです。


自分が大切な何かを置き去りにしていることに気づくファウスト。

彼は突然、杯を投げ捨てます。

第3場
黄金の宮殿は消え、あたりは荒涼としたブロッケンの谷。美女たちは悪鬼の姿に戻ってしまいました。
どういうつもりだ?

せっかくの楽しいパーティーだったのに

お前には見えないのか!

あそこに彼女がいる。黙って青ざめている。


あの美しい首のまわりにあるのは何だ?

赤い紐だ。鋭い斧で切ったように細い紐だ!

マルグリートの幻影は消え、ファウストは気も狂わんばかりに。
マルグリート、会いたい!

さあ、私の望みはこれだ!

ファウストはメフィストを引きずり、悪鬼たちをかき分けて出て行きます。
やっと動き出したね、ファウスト
少々遅すぎの感あり
そうだね。もっと早くファウストが気付いていれば、マルグリートの悲劇は防げたのかもしれません
お兄ちゃん、死んじゃったもんね……
それだけじゃないよ。マルグリートは錯乱のあまり、我が子を手にかけてしまったんだ!
えっ
えっ。いつの間に……
そう。多くの場合そこの描写はないんだよね(演出やセリフでさらっと知らされるのみ)
う〜ん。まあ確かに、はっきりとした描写はしない方がいいのかも
残酷過ぎるからな
そんなわけでマルグリートは今、牢獄にいます。嬰児殺しの罪で明日の処刑を待つ身です
か、悲し過ぎる……
第4場
牢獄にやってきたファウストとメフィスト。
さあ、去れ!
(しょうがないな。彼女も地獄に連れて行くか)

明日の朝、日が輝いたら処刑台が準備されます。

あなたに従うことを、マルグリートに決心させなされ。

看守が眠っている間に、牢屋の鍵をファウストに手渡すメフィスト。
彼女を救うのは、あなたでなくてはならんのです
私たちだけにしてくれ!
急いで! 私は外で見張っていますからね
今回は音声のみで(第4場~5場の途中まで)ごめんなさい。でもフランコ・コレッリ、ニコライ・ギャウロフ……往年の名歌手が揃った素晴らしい録音です。


小太鼓や金管楽器の音で冷たい牢獄の描写をし、これまで仲良くやってきた悪魔とファウストが、次第に対立を深めていく様子を描いています。

さていよいよラストに向かっていきますが、その前に小休止。

やっぱりゲーテの原作についてもちょっぴり触れておきたいんです。ぜひお付き合いください!

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