第10話 シーベルの「花の歌」

文字数 1,410文字

第3幕 第1場
ここはマルグリートの住む家の前。

家には小さなドアや窓があり、その前に木々が生い茂っています。


シーベルがそっと入ってきて、バラやリラの花が咲く茂みで立ち止まります。

ここからシーベルによるカヴァティーナ(アリアよりも単純な形式による独唱曲)「花の歌(伝えておくれ僕の告白を)」です。
彼女に告げてくれ 僕の告白を

運んでくれ 僕の願いを

彼女の近くで咲く花たちよ

僕の心は昼も夜も

恋に悩んでいるんだ


甘い香りと一緒に

燃え上がる秘密を吸っておくれ

「花の歌」って『カルメン』の時にも出てきたよね
『カルメン』の「花の歌」も、ホセがカルメンに切々と恋心を打ち明ける内容だったよね。時に運命を呪う、大人の恋でした
あっちは例えて言うなら、演歌みたいだったな

そうかもね(笑)。『ファウスト』の「花の歌」は、少年シーベルの純情さが出ていてちょっと可愛らしい雰囲気。グノーの優しさがあふれている印象です。


ちなみに『カルメン』を作曲したビゼーは、グノーの弟子の一人。ビゼーは粗野で荒っぽく、あちこちで問題を起こしていたので、温厚なグノー先生は常に心配していたらしいよ

シーベルはマルグリートに捧げようと一輪の花を摘みますが、たちまちしぼんでしまいます。

先日のメフィストが告げた通りです。

神様に罰を受けたあの魔法使いめ

僕にも魔法をかけたな!

絶望的な気持ちになったシーベル。

でもすぐに解決方法を思いつきます。聖水に指を浸せば、悪魔の呪いも解けるのでは?


幸いマルグリートが毎晩お祈りをしているお陰で、すぐそこに聖水があります。シーベルは早速試してみることに。

大丈夫だ……!

悪魔め! 僕はお前を笑ってやる
僕が信頼しているのは、この花たちなんだ!

もしもこの愛が彼女を怯えさせるなら、せめて花たちが甘い口づけを与えてくれますように

いい人そうじゃん? シーベル君
いい奴ほど、なぜかモテないんだよなー(しみじみ)
シーベルはファウストと対照的に、信心深い様子ですね。

マルグリートがどちらの男性を選ぶのか、ぜひ予想してみて下さい。シーベルを演じるのは女性ですが、これが大きなヒントかも!

第2場
シーベルが花摘みのために一旦姿を消すと、反対側からファウストとメフィストが現れます。
ここなのか?
付いてきて下さい
何を見ている?
シーベル。あなたのライバルですよ
シーベルだって?
しっ! ほら、やってきたぞ……
ファウストとメフィストが木立に隠れると、花束を手にしたシーベルが戻って来ます。
(ルンルン気分)

僕の花束は素敵じゃないか?

(こっそり)素敵だよ
悪魔に勝ったぞ!

明日この話を彼女にしよう。

そして彼女が僕の心の秘密を知りたがったら、もうキスをしてしまうんだ!

花束を戸口にかけ、嬉しそうに出ていくシーベル。

こっちではメフィストが舌打ちしています。

女たらしめ!
ファウストに向き合い、メフィストはある策略を告げます。
博士殿。ここでお待ちなされよ。

あんな花束よりも、もっともっと素晴らしく、もっともっと見事な宝物を探してきてやろう

ファウストはやや不機嫌。悪魔の手引きで清らかな彼女を誘惑することに、いささかの躊躇を覚えているのです。
私を一人にしてくれ
仰せのままに
メフィストはファウストを残して出ていきます。
メフィストは意外とファウストに忠実だね。悪の道に引きずり込むためとはいえ……

しかし何を持ってくるつもりだろう?

花よりも素敵なモノって言ってたな
何でしょう(笑)。当ててみてね~!
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