第24話 ワルプルギスの夜

文字数 1,749文字

第5幕 第1場
ここはハルツ山地(ドイツ東部)の中。

不気味な鬼火が飛んでいます。

ヒースの中、葦の中

石の間に水の上

夜通し燃えて消えるのは

きらめく鬼火

気をつけろ、気をつけろ!

炎は冷たい光を発しながら移動する

それは死んだ者どもの霊魂なのさ

メフィストとファウストが山の頂きにやってきます。
止まってくれ
黙って付いてくると言っただろう
ここは一体どこなんだ?
私の帝国の中さ。

ここではすべてが私に従うのだ。

今夜はワルプルギスの夜!

今夜はワルプルギスの夜。ホウ!ホウ!
鬼火?

こりゃまた不気味な奴らだな

ワルプルギスの夜って、名前だけは聞いたことがあるよ
五月祭の前日に魔除けのお祭りをするんだよね
昔からヨーロッパではこの夜に魔女たちの集会(サバト)があると信じられてきました。場所はハルツ山地の中でも、最高峰のブロッケン山と言われています。
このシーンの鬼火は、魔女と同じと考えて良いのではないでしょうか
魔女って、箒にまたがったアレだよな?
そうそう、アレです(笑)。

魔女たちが集まって、魔王(メフィスト)の元で乱痴気騒ぎをするんだよ

ファウストはメフィストの帝国へ来てしまいました。


そういえばファウストは、あの世ではメフィストに仕える約束になっています。

ふいにその事実を突きつけられ、彼は恐怖に襲われるのです。

私の血は凍りつく!

(と言って逃げ出そうとする)

待て。私が合図を出しさえすれば、ここは明るくなるのだ
第2場
メフィストが手をかざすと、何と不思議なことが!

山が割れ、中から黄金に輝く宮殿が現れるのです。


中央には豪華なテーブル。

しかもそこには目の覚めるような美女たちがいて、テーブルを取り囲んでいます(魔女たちが化けています)。

夜が明け染めるまで、人目につかぬこの場所で、あんたを招待してやろう。古代の女王や遊女たちの祝宴だ!
古代の神々のために、杯が満たされているぞ!

歌は幸せと調和し、鳴り響く!

半裸の美女たちがファウストを手招きして誘います。

たちまち恐怖を忘れ、うっとりと進み出るファウスト。

美女たちがしなだれかかってきます。

美しい女王たちです。

優しい目のクレオパトラ。

魅力的な額のライス

クレオパトラは知ってるけど、ライスって誰?
古代ギリシャの有名な高級遊女なんだって。ルネサンス期にドイツの画家ホルバインが描いた「コリントスのライス」がこちら。きれいな顔して、しっかり大金を要求していますね〜(笑)
いやいや、伝説の美女たちはいいけどさ……

マルグリートがあんな目に遭っているのに、ファウストはここで遊んでるわけ?

ファウストが人生に満足した時、悪魔はその魂を手に入れることができるわけです(その部分の解説は後ほど)。

悪魔も快楽を提供しようと必死だよね

ライスも魔法が解けたら、シワだらけの魔女に戻るんじゃね?
そうそう。でも美しい夢はすぐに覚めてしまうと、もったいないでしょ? オペラ『ファウスト』では、ここで壮大なバレエの見せ場が始まります
お、来たね、バレエのシーン!

美女たちの饗宴ということだし、見応えありそうだね

酒池肉林って感じ?
まさにその通り(笑)。でもこのバレエのシーンは魅力的であるにも関わらず、大部分をカットすることが多いんだ。


なぜってオペラ『ファウスト』は、ただでさえ3 時間半にも及ぶ超大作! 全部やっていたら4時間コースになっちゃうでしょ

あ〜……

現代人はそこまで付き合ってらんないわ(笑)

じゃ、俺たちもいいよ。

次行こうぜ、次

ちょっと待って~(汗)!

前述の事情によりこの部分のみの動画は見つからなかったのですが、だからと言って全く見ないのはもったいない。だって踊りも音楽もすごいんだもん

この部分は独立してバレエの舞台になったり(『ワルプルギスの夜』)、クラシック音楽のコンサートで演奏されたりしています(『ファウスト組曲』)。


せっかくなので、ここではバレエの方の動画をご覧頂きましょう!

バレエ『ワルプルギスの夜』。特に物語はなく、山中で鬼と妖精が踊り狂うという内容です。

(オペラの場合、ファウストがメフィストや美女たちと寝そべって眺めているワンシーン)


「いけない遊び」に興じる鬼たち。つい官能的な表現に目が行ってしまいますが、人間離れした踊りの技に圧倒されます。グノーが心血を注いだ音楽とともにご鑑賞ください!

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