第2話 伝説、ゲーテ、そしてグノー
文字数 1,956文字
①ドイツを中心に、伝説や民話として語り継がれてきた『ファウスト』
②ドイツの文豪ゲーテによる戯曲(韻文で書かれ、不朽の名作とされる)
③②に触発された各種の音楽。一番良く知られるのはフランスの作曲家グノーによる、ド派手なグランドオペラ
※ドイツでこのオペラが上演される場合、『ファウスト』ではなく、別の登場人物の名を取って『マルガレーテ』と呼ばれるなどしてきました。
このオペラがヒットしたことに、文豪ゲーテの知名度は決して無関係ではありません。日本語タイトルがドイツ語風に『ファウスト』となっているのもそれが理由だよ(フランスオペラなので、本来は『フォースト』とすべき)
そうそう! とはいえグノーも強い信念をもって生み出した作品だし、傑作オペラには違いないんだ。こちらは別作品として純粋に楽しめば良いのでは?
いろいろ言われてきた経緯はあるけれど、聖と悪の戦いがクローズアップされている点など、オペラが洗練させてきた面もあります
……いきなり暗い表情をした老人がやってきました。
私はファウスト。
見たまえ、これらの論文の束を。私が書いたものだ。この人生、すべてを研究に捧げてきた。
学者として一応の成功は収めてきた。なのに今、私の胸中は空っぽだ……
もはやすべてが無駄だったとしか思えぬ。目の前にあるのはただの絶望。もう死ぬしかない……
(テノール)
フッフッフ。
いいぜ、いいぜ~。ファウスト博士よ、自分の中に渦巻く欲望に気づきたまえ。
このメフィスト様は、お前の本音を知っている。
さあ若返らせてやろうじゃないか。今こそ世の掟を忘れ、美女とやりたい放題やるがいい!
(バス)
※というわけで、ファウスト博士の容姿は後ほどガラッと変わります(重要)。
私はマルグリート。せっせと働いて、糸をつむいで、教会に通ってお祈りしてるわ。だけど、本当はちょっぴり華やかな世界にも憧れていて……。
いいえ、いけないわね。質素な暮らしに満足できるようでなくちゃ、お兄様に怒られちゃう。うちのお兄様は怖い人なんだから
(ソプラノ)
私はヴァランタン。親を早くに亡くしてからは、マルグリートの親代わりだ。美しい妹に悪い虫がつかないか心配でならん。
戦争の足音が近づいている。兵士として出征しなければならぬ自分の身がつらい……
(バリトン)
僕はシーベル。ヴァランタンの友人だよ。
こんなこと人には言えないけど、マルグリートと結婚するのは僕しかいないと思うんだよね……彼女はどう思っているんだろう?
(メゾソプラノ・女性が男性を演じる、いわゆるズボン役です)