第6話 6群の合唱、混戦!

文字数 1,914文字

ファウストと悪魔は意気投合したな。

彼らはさっそく女遊びを始めるのか?

そう簡単に事は運ばないんだ。

第2幕では、二人を待ち受ける街の様子が描写されるよ

第2幕 第1場

町の門の前では定期市が開かれ、大層なにぎわいです。

傍らには、バッカスの看板を掲げた居酒屋が。人々が楽しそうに飲んでいます。

(学生たち)

ワインにビール

ビールにワイン


酔っぱらいは何でも飲むのさ

(僕はヴァグネル。この後に出てくるヴァランタンの友人です)

酔っぱらいは何でも飲むのさ。水以外!


栄光も愛も、飲むことにあるのさ

学生たちはグラスをぶつけ合って盛り上がります。


その喧噪の中へ、今度は勇ましい兵士たちがやって来ます。

(兵士たち)

娘も、砦も

同じもんさ。畜生め!


古い城も、若い恋人も

俺たちにとっちゃ攻撃対象!

一方、のんびりした一群もいます。
(市民たち)

日曜や祝いの日には、戦争の話をしたい。

他所の国じゃ、人々は頭を殴り合っているが、俺たちは丘の上に座って、川舟が行き交うのを見るのだ。

グラスを手にしながら!

何だかたくさん合唱団が出てくるね〜
この豪華さが、いかにもグランドオペラなんだ!

次は女性たちが出てくるよ

(娘たち。兵士たちを指し)

あの勇敢な人たちを見て!

冷たくし過ぎないようにしないとね

すました顔をして実は兵士たちの気を引きたい女の子たち。

学生たちは(嫉妬して?)追いかけます。

あの嗜みのない顔つきを見ろよ

まったく、勝ち誇った態度


友よ、気を引き締めていこうぜ

(既婚女性たち)

娘たちを男たちが追いかけているわ(笑)

あたしたちだって若い娘には負けないわよ

ずっと魅力的というわけにはいかないけど

おばさん、気に入られようったって無駄よ

あんたたちが怒ったところで全然怖くないわ

皺だらけの額が赤くなるだけでしょ


ねえ、かっこいい男の子があたしを選んでくれるのよ

誰だって信じちゃう

かっこいい男の子があたしを選んでくれるのよ

男に媚びちゃって、何とまあ恥知らずだこと

悪趣味な男にはお似合いよね

馬鹿でなくちゃ無理だわ

色ごとの話で堂々としていられるなんて

馬鹿でなくちゃ無理だわ

隣人よ ワインのグラスを空にしよう

私の妻は文句ばかり

いつでも私が従わねばならぬ

私の妻は文句ばかり

……というわけで、5つの合唱団とヴァグネル、合計6群の大合唱でした!
ツッコミどころ満載な歌詞だったな
超にぎやか、ちょっと卑猥な雰囲気もあったね
こちらの動画では、学生、市民、兵士、既婚女性、娘たちの区分はぼかしてありますが、大砲の存在が戦争が近いことを思わせたり、目隠し鬼ごっこ(捕まえた人とキス!)でちょっぴり卑猥な感じを表現したりしています。

大道芸人たちの踊りは、広場の喧噪そのもの。踊り子たちの中に、ちゃっかり悪魔がいますね!

第2場
ヴァランタンが、友人のシーベルを伴って広場にやって来ます。

出征が近いので、やや思い詰めた表情。

……
(……何と慰めたら良いのやら)
首にかけたメダルを握りしめるヴァランタン。
この聖なるメダル……妹がオレにくれた

戦いの日に死を逃れるため

オレの胸にとどまっていてくれ!

おっ。ヴァランタンだ!

オレたちを探しているな

友人たちに近づいていくヴァランタンとシーベル。
最後の一杯だ、諸君。

そうしたらお別れだ

……心残りか?
そりゃそうだよ。

君たちはもちろん、この地ともしばしのお別れだ。

オレはマルグリートを残していかねばならないんだ。

彼女を見守るお袋はもういない

……一人ならず、友達が君の代わりを務めるさ
ありがたい!
僕に任せて!
ここからヴァランタンによるカヴァティーナ「父祖の代から生まれついたこの地を去る前に」です。
父祖の代から生まれついたこの地を去る前に
天の王たる神様、私の妹をお預けします

あらゆる危険から守り給え、とても愛おしいあの妹を


悲しい思いを振り捨てて

私は栄光を求めに行く 敵のただなかへ

妹思いのお兄ちゃんだね。

しかもイケメン!

シスコンってやつか?
この兄妹の母親。原作では生きていて、マルグリートの自由を奪っているのですが(だから後で殺されてしまう)、オペラではすでに亡くなっている設定です。兄のヴァランタンが妹の親代わりを努めてきました。


つまりヴァランタンは、マルグリートの大切な家族や信仰心を体現するキャラとなっているのです。

ヴァランタンの歌では、前奏曲で耳にしたメロディーが再登場します。


オペラの前奏曲は普通、劇中に出てくる歌のダイジェストという感じで後から作られますが、この曲に関しては前奏曲の方が先だったそうです(グノー自身がそう発言)。

独りぼっちになってしまう妹を心配する、優しいお兄さん。メロディーの美しさはヴァランタン本人よりも、妹のマルグリートがどういう女性なのかを感じさせます。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色