第8話:教え子の思い出と夢実現と長期アルバイト

文字数 2,077文字

 その後、彼の持ち味の人なつっこい笑顔で多くの新しいお客さんをつかみ彼の畳屋も繁盛してる様だった。また、たまに道を歩いていると軽トラに乗って仕事に行く彼に会うと吹っ切れた様な充実した笑顔が頼もしく思えた。2つ目のケースが良い高校へ進学の手伝いだった。一人は、私と同じで工業系をめざして山下と同じ学校の機械科に無事、入学できた。

 彼は、元々できる子で、やる気に火をつける事で自ら成長していった。ほめるたびに喜んで、えくぼが現れるのが印象的だった。もう一人は、元々、非常に頭の良い子で山下が厳しく自分に甘えるな常にトップをめざせと言い続けた。お前の能力の割に成績が良くないが手を抜いてるんじゃないかと、げきを飛ばすたびに、にらみ返してきた、

 しかし、最後は中学校をトップの成績で卒業し高校も県内トップ高に入学し日本でトップと言われてる東京大学に入った。山下の住んでいた市営団地では彼だけが東京大学に入学した。家庭教師・冥利につきる出来事だった。家庭教師って子供の興味を引き出したり本当にやりたい事を明確にしてやる事で成長していくことをあらためて勉強させられた。

 山下だけの空間を持てたことで、集中して勉強も、趣味もできる様になった。英語はFEN、米軍の英語放送を毎日聞く様にして英語が錆びない様に鍛えていた。自由になる金も少しできた。そこで最初に興味を持ったのは珈琲。喫茶店で飲んだ珈琲の旨さが忘れらなかった。そこで最初は手動式珈琲ミルとサイフォンを買って豆をひいて珈琲をいれる様になった。

 サイフォンは下に球形のガラス容器、フラスコと上に円筒形のガラス容器、ロートと二つの容器をゴムで接合できる形状であり、の容器ロートの下に、布製のフィルターをかましてあり、そこで濾過する格好になっている。書いて説明するより実際に見た方が、わかり易い。サイフォンは水の入った下のガラス容器、フラスコの下からアルコールランプに火をつけ直火で湯を沸かす。

 湯が沸き始めたら、ひいておいた珈琲豆を上のガラス容器、ロートのフィルターの上に置きロートをフラスコに差し込むと沸騰したお湯が上の容器に移り全部が上に移った時にアルコールランプを消す。そうすると上にたまった珈琲と湯の混ざったものが真ん中のフィルターで濾過され香ばしい珈琲ができる。

 ただ、その後、サイフォンを毎回洗う事が面倒になり簡単なドリップにした。コーヒー豆は、モカ、キリマンジャロ、マンデリン、ブラジルなど、いろんな豆を、少しずつ買って楽しむようになった。その後、紅茶にも興味を持ち、ダージリン、オレンジペコなどを飲み始めた。その次に、当時はやっていた、ゲルマニウム・ラジオに興味を持った。

 その後、トランジスタ・ラジオを経て、オーディオに、夢中になっていった。趣味というものは、最初、あこがれから始まり、その夢が、だんだん大きく膨らんでいくものだと再認識させられるのだった。夏休み冬休みのアルバイトは海芝浦にあった東芝関連の工場で働いた時間が最も長かった。日当は、二千円であった。

 その当時、公害が一番ひどい時期で毎日、午前と午後用のガーゼマスクを与えられていたが半日で真っ黒になり硫黄臭がして気持ち悪かった。昼食は、食堂で定食二百五十円天ぷらうどんが百八十円。毎日、空腹で定食+うどんか、そばの連続で空腹を満たしていた。ただ工場は東芝系で他の工場より環境や労働衛生は、比較的、良かった様であった。

 仕事を終えると必ずお風呂に入り家に帰る。家までは電車バスでを乗り継ぎ九十分程度。当時、工事現場での手伝いで仕事を終えた後に、たまに、横浜駅近くの野毛の寿司屋で親方に寿司を食べさせてもらった。その時の親方は寿司を食ったら、さっさと帰っていいぞと言っていた。親方が、少し楽しんで帰るからと意味深な笑いを浮かべ店の二階に女と上がっていく。

 いわゆる、ちょんの間だった。その他、工事現場の手伝いの日当が三千円。一番、給料の良いアルバイトは横浜港での荷受けで一回運んで、千円。しかし荷物は五十~八十キロあり、担げる人は、そんなにいない。ただ、給料が良いとの噂が立ち担ぐ人が多く集まる様になり一日、最高五回位までしか担げない様になっていった。つまり山下にとって日当五千円が最高額のアルバイトだった。

 当時、一番、高い学生アルバイトは米軍基地での米兵の死体洗いで日当は一万円と聞かされた。しかし実際に経験した先輩に聞くとホルマリン臭がきつく死体を見て一週間、食欲が落ちて、二度としたくないと言っていた。山下はアルバイトと家庭教師で年間10万円以上稼いぐ様になりオーディオに、のめりこみ始めた。

 時間がある時は、よく秋葉原へ行きショールームでステレオサウンドを聞いて憧れが強くなっていた。最初ターンテーブル(レコード盤をのせて聞く装置)FMチューナー、プリメインアンプ、スピーカーを買いそろえていった。そのメカマニアが高専のコンピュター・プログラムの時間、実際にプログラムを組んで大型コンピューターを動かす授業を受ける様になった。
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