第11話:草野球と祭りに出かけ4Hクラブへ

文字数 2,061文字

 腕の方は、山下先輩が飛び抜けて強かった。彼の性格通り几帳面な打ち方で相手がリーチをかけると上手に逃げた。また、調子の良い時は強気で、うってくる。次に楽しかったのは町内野球大会だった。年に四回、春夏秋冬に行われた。かなり、この地域では野球が盛んで広い原っぱが多く練習場には困らない。田舎という立地条件が幸いしたのかもしれない。

 そして、その二人と先輩と、工場長に訳ありの若手二人、運送担当の人、近所の人など、九人をかき集めて、町内の野球大会に出場していた。ただ強くはなく最高でも三回戦までだった。優勝は、強豪三チームが、ほぼ独占状態だった。工場は、従業員が約三十名、うち女性がパートも含めて五人だった。特に高齢者の兼業農家の人が多かった。

 そのために野菜、果物をたまに差入てくれるのが楽しみだった。訳ありの若手が二人おり軽い知的障害を持っている若者だった。塩尻君、二十代後半で、ぽっちゃり体型でエロ、スケベとか呼ばれる位の男で、お金が貯まると近くの町のソープランドへ行くのが、唯一の楽しみだった。発送係のパートの、若めのおばちゃんの、お尻を触ったり、胸を触ったりした、

 そのため、よく、ひっぱたかれていた光景が微笑ましく思い出されてくる。人は良いのだが、こすっからい所があり、悪るっぽいのだが、賢くないので企みが、すぐばれてしまう。ただ気が小さく、びびりで、大きな事は、起こせない、かわいい、悪ぶってる兄ちゃんといった感じであり、みんなに、からかわれていた。

 もう一人は十代後半で良い子で挨拶もするし、いつも笑顔の好男子だった。しかい、しゃべるのが苦手で、よく馬鹿にされていて、口で、反論できないので真っ赤な顔をして、悪口を言った人を追いかけまわしていた。お母さんが大事に、育てていて、しつけもできており、障害さえなければ、普通に働いて、家庭をもてたであろう、愛すべき男の子だった。

工場に入社してから2ケ月後、近くで、祭りに、地元に住む、会社のおじさんに誘われた。そして、神輿の担ぎ手が少ないので、頼まれた。おじさんは、山下の腕力に期待して、連れてきたようだった。神輿を担いで、汗びっしょりになると、コップにいれた水のような者を周りの地元の人が渡してくれる。一気に飲み干す、それは日本酒だった。

 あまり好きではないので水をもらい口直しをした。30分位で担ぎ手が交代して近くの集会所で夕飯と、ご馳走が用意してあった。おなかも空いていたので遠慮なくいただいた。一休みしていると、また、お呼びがかかり、再度、神輿を担がされた。そして2時間程して、お祭りは終了した。終了後、集会所に集まり山下を連れてきたおじさんが近所の若者達に山下を紹介した。

彼らは、農協の下部組織で4Hクラブ「農業青年クラブ」とか言っていた。よく聞くと地元の若手農業者の集まりだった。面白そうなので山下もゲスト会員として入会することにした。気さくな連中で総勢、男性5人、女性7人で合計12人で代表格の牛島君と握手した。その後、彼らの仲間入りして、いろんな事が起きるとも知らずに山下はニコニコした。

 数日後、牛島君からバーベキューのお誘いがあり、でかけることにした。 工場まで、車で来てもらい、バーベキュー会場は、車で15分の大きな河川敷だった。数人が、釣り糸をたてて、魚を釣りはじめた。山下は魚釣りの餌が苦手なので、バーベキューの用意の方を担当した。30分もすると、魚が釣れたようだった。バーベキューの用意も完了した。

 早速、火をおこして買ってきた豚肉と牛肉とナス、ピーマン、キャベツを焼き始めた。大きな鉄板が3つあり1つは焼きそばを作るために、あけておいた。40-50分して総勢10人があつまりバーベキューが始まった。たれをつくったり野菜の焼け具合を見たりして楽しんだ、運転手以外は生ビールを飲み始めた。

 若い連中で、焼けるそばから、どんどん食べるので、できあがった料理はすぐなくなる。そこで、山下は、焼きそばを大量に作り始めた。これで、みんなの食欲に見合うだけの料理の供給ができるようになった。生ビールが、ドンドン、開き始めて、みんなの食べるスピードが遅くなり、ゆっくり、バーベキューを焼けるようになった。

 飲んで食べて1人ずつ自己紹介をした。会長の牛島君、副会長の石島君、副会長の君子さん、夢子さん、知加子さん、吉田君、木下君、絹子さん大石君と山下の合計10人だった。牛島君が山下に自己紹介をしろと言った。そこで今度、近くの工場の技術として入社した山下ですと、みんなに挨拶した。出身は横浜、スポーツは柔道、仕事は研究開発と大きな声で述べた。

 いろいろ質問を受けて答えた。一番困った質問は、なんで、こんな田舎の工場に入ったのかと言う質問だった。オイルショックで就職難でここに来たというと、皆、不思議がっていた。今度は山下が見た彼らの第一印象だが総じて子供っぽい感じがした。ただ顔は、日に焼けて健康そうでにみえた。女の子では君子さんが可愛い感じで好みだった。
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