第7話:家庭教師をした思い出2

文字数 2,008文字

 それに対して意外にも沢田研二に好かれるためなら勉強しようと言い始めた。その後は問題集を真剣にやり続けた。それと共に問題を解ける様になってきて自信を持ってきた。そこで良い会社に入って多くの給料をもらって沢田研二のいるダイガースの追っかけでもしたらいいんじゃないと言った。すると、真面目に、それいいね!と言い良い高校、良い企業を目指すと言い始めた。

 これには、さすがに驚かされた。数か月後クラスで10番になった様で自信を持ってきた。最後には、この地区の二番目の普通高校に入って近くの銀行に勤めて結婚した。もう一人印象に残っているのは加藤君「男子」と佐藤さん「女子」だった。彼らを同じ時間に教える事になった。加藤君は数学以外が苦手で記憶力が弱かった。

 一方、佐藤さんは逆に記憶力は強いが数学が大の苦手。そこで加藤君に歴史の記憶問題を出して制限時間が終わった時に答えてもらう様にした。やはり半分位の正解率が続き改善しなかった。佐藤さんは方程式が苦手で問題を出すと最初やる気なかった。しかし、ある時から急に正解率が高くなった。 なんと山下が気が付かないうちに答えをさっと見て覚えていた。

 二人の成績が向上しないで困っていた時、佐藤さんが加藤君に、あんた馬鹿だね!なんで、そんなの覚えられないの覚える気があれば簡単に覚えられるでしょう。やる気がないからよと言い始めた。これには加藤君が腹を立てた様で真剣な顔で覚える様になった。そして何と二人は仲良くなってしまった。そして地区では中程度の同じ高校に入った。

 その後も、お互いに仲良くしていた。卒業後、彼は大学へ彼女は近くの企業に就職した。ある日、二人に子供ができて結婚し引っ越して行った。もう一人の二のケース、下島君は、とにかく答えを違える子だった。例えば間違える確率と間違えない確率で圧倒的に間違える確率の方が少ないケースでも堂々と間違え続けた。

 下の問題では大抵、数回、間違えた後に覚えるケースが多い。確率的にも間違える方が難しい。それを何と間違えるパターンを全部答えてくれた。これには、さすがに、よく全問、間違えたと、ほめたい位だった。多分、教えている山下にも、全問不正解の答えを述べる方が、よっぽど難しい。つまり確率的には、超難問の問題に全問正解したのと同じ位,難しい事だ。

 実際に出題した問題は下の通り。この問題の不正解の組み合わせ全パターンを答えてくれた。ファンタスティック!すげー、下島は天才だと、山下は、心の中で叫んだ。具体的に言うと英語の所有格と目的格であった。
「アイ・マイ・ミー・マイン」
「ユウ・ユアー・ユー・ユアーズ」
「ヒー・ヒズ・ヒム・ヒズ」
「シー・ハー・ハー・ハーズ」

 ただ、彼は冷静な子で純朴で非常に性格が良く人の話をきちんと聞く子。そこで彼に冷静に話す事にした。山下は勉強が好きで興味あるのだが下島君は、そうではないらしいと言った。また山下は不器用で気が短くてドジな所が欠点だと言った。下島君は、どうだと聞くと彼が言うには、本当の所、勉強は興味がないと告げた。

 そこで、下島君は何に興味があるのと聞くと工作が好きで、いろんなものを作り上げるのが好きですと答えてきた。彼の父親が畳屋をやっていたので継ぐ気はないのか聞くと、その気がないと答えた。理由を聞くと仕事がきつい割に収入が少ない点、休みが不定期でサラリーマンの様に土日休みではない。また格好悪いので女の子にもてない。

 それにボーナスも昇給もないと冷静に分析した。そこで山下が畳屋は誰でもなれるものではなく、師匠について修行しないとできない。またお客さんに信用されないと商売にならないと話した。それに畳屋も、やり方をかえて注文を増やす努力をすれば儲かる可能性が高くなるのではないかというと確かに、そうかもしれないと言ってきた。

 近所に軽トラで団地をまわって御用聞きをして儲かっている若手の畳屋もいるとの事。それだよ下島君は手先も器用だし、気が短い事もないので畳屋に、すぐ慣れるのではないかと言うと家が畳屋だから、その気になればねと答えた。

 下島君は無理して勉強するよりも、それで稼いだ方が早いんじゃないかと伝えると、そうかもしれないと言いだした。翌週、彼と母親と挨拶にきて、家庭教師を受けるのを辞めて中学卒業したら父親を手伝って、畳屋になると決めたという。山下が、その方が向いてるかもしれないと彼の母親に伝えた。今迄、格好悪いとか儲からないとか文句ばかり言って畳屋を馬鹿にしていた。

 しかし、急に儲かる畳屋になるよと言い出した。お母さんから山下さんが人には向き不向きがあり向いている方を選んだ方が合理的だと言ってくれた、息子が、その気になった様だと。そこで山下が若い子には先入観だけで、好き嫌い、かっこ良い悪い、儲かる儲からないと決めつける事が多いので、成功し易い道を選ぶのは重要な事だと話した。
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