第45話 良いオパールの選び方 ~記念に宝石を買う~

文字数 1,962文字

普段と少し違った選択をしてみる。
するとそこには「未知なる世界」が広がる。

ケアンズでのこと。
この街で何かしらこの旅の記念になる品を買おうと考えた。
これまでオーストラリアの旅において買い物はほとんどしなかった。
買ったモノと言えば、絵ハガキと夜の市場で買ったアノ件のネックレス(『夜の市場でハプニング(第18話)』)くらいだろうか。
初の長期の旅と言うことで、どのくらいのペースでお金が減っていくのか判らず、なるべくお金を使わないように旅をしてきた。
その為、旅の終盤に差し掛かり、わりと旅費が残っている。
そこで私は何かしらオーストラリアらしい記念の品を買うことにした。
「さて、何を買おうか……」
せっかく買うのであれば
――これぞオーストラリア!
というモノがよい。
あれこれ考えた結果、私は『宝石』を買うことに決めた。
じつはここオーストラリアは世界でも有数のオパールの原産国なのである。
私はこの旅の記念に柄でもなくオパールを買うことに決めた。
勿論、これまで宝石に興味を持ったことも、買おうと思ったことも、まるでない。
では、なぜ宝石を買おうと思い立ったのかと言うと、あえて……
――普段と違った選択をしてみる
そうである。あえて普段とは違った選択をしてみるのも面白いだろうと考えたからである。
「宝石店に寄っていこう」私はそう言った。
「なるほど、オパールか」広沢もすぐにそこに気づいた。
街を散策していると、すぐに宝石店は見つかった。
私たちはその店に入った。
――まさか学生の私が宝石を買う日が来るとは!
店内のショーケースには色とりどりの様々な宝石が並べられている。
学生の私には宝石店に入るのもこれが初。まさに「未知なる世界」。
店内にいた日本人らしき女性の店員さんが英語で挨拶をしてきた。
――ハロー
私たちも「ハロー」と、英語で答えると、店員さんが今度は日本語で尋ねてきた。
「日本の方でしょうか?」
「ええ、日本から来ました。学生です」
店員さんが少し嬉しそうにニコリと笑顔を見せた。
オーストラリアに来て初めての日本人の店員さんであり、私も少し嬉しく感じた。
「旅の記念にオパールを買おうと思っているのですが」
「そうなのですね」
店員さんが丁寧にいろいろと宝石やオパールに関して詳しく教えてくれた。
指輪やネックレスに装飾されたものは価格が高いので、記念で買うのであれば装飾のない「石」の部分だけで買うと安く買えるとのこと。
私が学生であることを考慮して、安く買う方法を提案してくださったわけである。
――親切な店員さんだ
店員さんは店の奥からトレーに載せた「磨かれた石だけの状態のオパール」を持って来てくれた。その中から選ぶことにした。
さらにオパールを選ぶ時のコツを教えてくれた。
オパールは光の当たる角度によって、青、黄色、黄緑、オレンジ、赤など、さまざまな光り方をする。
オーストラリアでは「赤色に光る部分が多いオパール」が貴重とされているとのこと。
私は1つ1つ丁寧に角度を変えてオパールの光をつぶさに観察した。
すると、1つだけわりと大きく赤色に光るオパールがあった。
「これ、わりと赤い部分が大きいですよね」私は言った。
「あれ?本当ですねぇ」
店員さんも気づいていなかったようで、どうやらとても良いものが安い価格帯の石に混ざっていたとのことだった。
「では、これ、をいただけますか」
「良い石が見つかり良かったですね」
店員さんも笑顔でそう言ってくれた。とても親切な店員さんである。
旅の記念の品のオパールを買い、店員さんにお礼を伝え、私たちは店を出た。
勿論、宝石を買ったのは初めてのこと。
まさか自分が学生にして宝石を買うとは思ってもみなかった、が……
――気に入ったオパールが見つかり良かった
とは言え、宝石には全く興味が無いので、正直、「宝石を買った」という感覚は無い。
むしろファイナル・ファンタジーなどのRPGゲームなどにある、『旅における重要アイテム』を手に入れたような気分。
――ピコーン!『龍崎は!オパールを手に入れた!』のような……
そんな気分である。これはこれで少しばかり楽しく嬉しいことである。
学生の私にとって珍しくもあり新鮮な体験であった。
これもまた、旅の良い思い出のひとつとなった。

宝石に興味があるわけでもなく宝石店に入ったのも初めてのこと。
普段と違った選択をしたことで未知なる世界を体験できた。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ未知なる世界」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

次回、珊瑚礁の美しい海で危機的!ハプニング!が起きることとなる。

【旅のワンポイントアドバイス45】
あえて普段とは違った選択と行動をしてみる。そうすることで自分の体験したことのない『未知なる世界』が目の前に広がってゆく。それもまた旅の良い思い出となる。


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