第24話 夢の街アデレードでハプニング ~憧れの夢を現実に~ 

文字数 1,701文字

人生において夢が叶うことは喜ばしい。
憧れの場所へ行くという夢を叶える、これぞ旅の醍醐味。

アデレードでのこと。
この街に来ることは、私の夢でもあった。
ここアデレードでは毎年F1オーストラリア・グランプリが開催される。 
何を隠そう、私は大のF1好きである。
特にアデレードでのレースは「市街地コース」と言われ、F1カーが猛スピードでなんとも街中の一般道路を走る。
市街地コースで有名なのはモナコ・グランプリがそうであるが、アデレードの市街地コースもとても素晴らしい。
私はこのアデレードのF1市街地コースに来てみたかったのである。
日本から持ってきたガイドブックにはアデレードのF1市街地コースに関する情報は載っていなかった。
そこで私たちはタクシーに乗り実際のF1コースを走ってもらうことにした。
地元のタクシー運転手であれば、市街地コースの配置も知っているだろう。
「タクシーがきた」広沢が手を上げタクシーを止めた。
「F1グランプリのコースを実走してほしいのですが」
「オーケー!」
タクシーで実際のF1コースを走ってもらうようにお願いすると、運転手はニコリと白い歯を見せ快諾してくれた。
私たちを乗せたタクシーはアデレードの市街地コースへと向かった。
――あぁ、嬉しい!
あのアデレードコースを走れるとは!
しばらくすると正面の道を指差し運転手が言った。
「ここからレースコースですよ!」
――おおおっ!
さあ、いよいよF1市街地コースの走行である。もうワクワクがとまらない。
F1中継で観ていた場所がタクシーの車窓から街のあちこちに見られる。
毎年レースが開催される為、街の至る所にF1コースとしての面影が残されている。
レースコースの縁石も街の所々に見られる。これは通常のコンクリートのグレーの縁石ではなく、白色と赤色に交互に塗り分けられた平たいレース用の縁石である。
F1好きの私はその縁石を観るだけでも十分楽しく心が舞い踊った。
さらにホームストレートには観戦棟の一部も残されている。
ホームストレートはレースのスタート地点となり長い直線コースが続く。
タクシーを停めてもらいホームストレートの縁石に足を掛け写真撮影をした。



この場所のスタートグリッドにF1マシンが並びレースの幕が切って落とされる。
赤色のランプが消え、青色のランプが点灯し、爆音を上げ一斉にF1マシンが走り出す光景が目に浮かんだ。
――いやぁ、素晴らしい!
F1インフォメーションセンターもあり、そこでF1に関するリーフレットやチラシをいただいた。
タクシーの運転手が即席ではあるが、とても良いF1ツアーにしてくださった。
ただ、1点だけ、「ん?」と思うところがあった。
じつは、ここでも思わぬことが起きていた。それは……
――ハプニング!
それは、このタクシーがF1アデレードコースを……なんと!
――逆走していた!
またもや、恒例のハプニングである。
もちろん交通規則上は逆走ではないが、F1ではホームストレートから右回りにコースを走る。
ところが、私たちの乗ったタクシーは左回りでコースを逆走していたのである。
「ん?これはF1的には、逆走なのでは?」
私はそのことに気づいていたが、とても気の良い運転手が楽しそうにガイドを交え運転してくれていたので、それは言わないことにしておいた。
――まぁ、それはそれで面白いか
私たちはアデレードコース逆走バージョンを楽しんだ。
F1コースを逆走とは、ある意味、貴重な体験である。
アデレードのF1コースを走り、とても良い思い出となった。
F1好きな人であれば、これは誰しもやってみたいことであろう。

夢が叶うことは、人生の喜びである。
この先どれほど多くの夢が叶うのかと考えると人生も楽しくなる。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ叶えられる夢」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

次回、私は書店で有り得ないハプニングを体験することとなる。

【旅のワンポイントアドバイス24】
現在F1オーストラリア・グランプリはメルボルンの公道で開催されています。メルボルンやアデレードを訪れる際には、実際にF1コースを走ってみるのも良い思い出となる。


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