第21話 カジノでリベンジ ~カジノ潜入の全貌・中編~

文字数 1,582文字

一度の失敗で諦めてしまえば、そこで試合終了。
やりたいことがあるならば諦めず工夫をしてみる。

アデレードでのこと。
カジノ潜入に失敗した私と広沢は大人しく宿にいる。
夕食までにはまだ時間がある。それまで宿でゆったり過ごすことにした。
ところが、やはり……
――諦めきれない!
あれほど楽しみにしていたカジノに入れなかったことに納得がいかなかった。
「広沢、もう一回行ってみるか」
私はカジノへの再度潜入を提案した。ところが……
「無理だと思うよ」
広沢は完全に戦意喪失し諦めてしまったようである。
私のこの提案に乗る気は無いらしい。
「いやいや、やり方次第で必ず潜入できる」
私は、もう一度、単独でカジノ潜入にチャレンジすることにした。
ただ、前回と同じようにやっていては潜入も無理だろう。
そこで、出来得る限りの工夫を凝らしてみることにした。
まずは、服装を整える。上は「襟付きのシャツ」を着た。半袖Tシャツよりは幾分ましだろう。下はジーンズとスニーカーしか持っていないので、これでいく。
もちろん荷物は持たず、手ぶらでいく。
「うむむ……これだけではちょっと苦しいか……」
しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
あとは何とかいろいろと工夫を凝らし乗り切ることにした。
さあ、いよいよカジノ潜入再チャレンジである!
カジノ入り口の扉の両脇には、やはり大柄の男性スタッフが立っている。
私は金ピカのハンドルの大きな入り口の扉に近づいて行った。
少しばかり足早に、一歩、二歩、三歩……
すると、なんと!入れた!
「やった!」
進行を制されることなく、難無くスルリとカジノ潜入に成功!
あたかも自分が夜神ライトにでもなった気分とでも言おうか。
――『計画通り!』
正直、これは嬉しかった。
一体、どうして入れたのか?と思われただろうか。
じつはこれにはいろいろと理由がある。
絶対にカジノに入りたかった私は、いろいろと工夫を凝らした。
カジノ潜入に一番のネックとなるのは、やはり服装。
上は襟付きのシャツを着たものの、下はジーンズにスニーカーのままである。
この服装しかなかったから、仕方がない。
そこで、私はスタッフの目がなるべく下にいかないように工夫した。
それは……
――相手の顔を見て近づく
これである。こちらがしっかりと顔を見て近づいていけば、当然、相手も私の顔を見る。
そうすれば、視線は足元にはいかない。
次に「私は常連客である」という雰囲気を演出してみた。
これは立ち居振舞いで何とかなる。
まずは姿勢。スッと背筋を伸ばし、いかにも慣れている感を出す。
歩くスピードも少し足早に躊躇なく堂々と近づいていく。
足早に近づき考える時間を与えないのも狙いである。
そして、スタッフの間近にまで来たら、笑顔の表情を作る。
どのような表情を作るのか、と言うと……
――フッ、今日も勝たせてもらうよ
というような余裕の表情を演出して少し微笑んでみた。
(我ながら役者だな、というのは勘違いだろうが……)
すると、なんと!
相手も笑顔を返してくれた!
おぉ、やはり笑顔には笑顔が返ってくる!
――目の前の黄金の扉は開かれた!
難なくカジノの扉を通過することが出来た!
「カジノ潜入成功!」
心の中で喜びつつ、そうつぶやいた。
あれこれ考えた作戦が功を奏したわけである。
こうして私はアデレードのカジノ潜入を果たした。
この潜入劇も印象に残る旅の良い思い出となった。

諦めてしまったら、そこで試合終了。
工夫を凝らせば可能性の扉もカジノの扉も開く。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ開く可能性の扉」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

次回、私はカジノで、ついにギャンブラーと化すこととなる。

【旅のワンポイントアドバイス21】
旅のハプニングは工夫をすることで乗り切ることが出来ることがある。やりたいことがあるのであれば、諦めず工夫を凝らすことで世界が開かれてゆく。


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