第19話 同胞意識でハプニング ~日本では有り得ない出来事~

文字数 1,561文字

旅の途中、日本人を見つけると嬉しい気持ちになる。
これは異国の地だからこそ体感できる貴重な感情体験。

メルボルンでのこと。
私たちは次の街アデレードへと向かう。
私と広沢はバス停のベンチに座り長距離バスが来るのを待っていた。
そこに二人の女性旅行者がやってきて、私の隣の席に腰を下ろした。
――おや……
どうやら日本人のようである。
ほどなくすると、片方の女性が私に話し掛けてきた。
「メルボルンの動物園にいましたよね?」
急に声を掛けられ、少し驚いたが、すぐに返事を返した。
「ええ、そうです。動物園に行きました」
(ニューホライズンの例文のような受け答えになってしまった……)
その女性たちがメルボルン動物園にいた時に、私たちの姿を見かけたとのことだった。
――俺たちはそんなに目立ってしまうのか?
とも思ったが、おそらく事実はこうである。
海外ということでメルボルンには日本人はほとんどいない。
その為、日本人であるということだけで目につき記憶にも残りやすいのである。
私はこの女性たちがメルボルン動物園いたことを知らなかったが、かりに見かけていたとしたら、「あ、日本人だ」と私も反応し記憶したはずである。
さらには同胞の日本人を見かけると嬉しい気持ちになるので記憶にも残りやすい。
実際、この女性たちが隣に腰を下ろした時にも、私も「日本の方かな」と反応していた。
不思議と、日本人というだけで、どことなく仲間と感じて嬉しい気持ちになる。
日本国内ではこのようなことは、まず有り得ない。
自分の隣に日本人が座ったとしても、日本国内では嬉しい気持ちは生じない。
これは異国の地だからこそ感じる同胞意識であり貴重な感情体験である。
また、こんなこともあった。
私と広沢がシドニーの街を歩いていると……
――驚くべき出来事が起きた!
なんとも日本人の大勢の女子学生さんたちが「一緒に写真撮らせてくださぁい!」と駆けよってきたのである。
正直、これには少しばかり驚いた。
私たちはタレントでも何でもない。普通の一般人の大学生である。
それなのに大勢の女子学生さんたちが写真を撮らせてくださいと駆け寄ってきたのである。
このようなことは日本国内では絶対に起こり得ない。
――まず、無い!
これはオーストラリアならではの最大のハプニングとも言える。
女子学生さんたちも『異国の地で同胞の日本人を発見した』から、一緒に写真を撮りたいと思ったのだろう。
この出来事から私は懐かしい場面を思い出した。
それは修学旅行でのワンシーン。
京都の街を男二人自由行動で散策している。
すると、たまたま同じクラスの女子たちと街中で鉢合わせ「写真、撮ろ!撮ろ!」と言われ一緒に写真を撮る。
そんな感覚に近い出来事であった。
京都という普段とは違った場所でクラスメイトに出くわすと嬉しい気持ちになる。
このオーストラリアで出会った女子学生さんたちも異国の地で同じ日本人を見かけ嬉しい気持ちになり写真を撮りたくなったのだろう。
私と広沢も「旅の記念になるだろう」と、快くその申し出に応じた。
ズラリと皆で横一列に並び、記念写真を撮った。
――パシャリ!
「ありがとうございました!」
女子学生さんたちは元気よく挨拶をして去って行った。
旅ならではの珍しい出来事として不思議な思い出となった。

異国の地では同胞意識から日本人を見ると嬉しくなる。
これは日本国内では起こり得ない不思議な体験となる。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ不思議な体験」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

次回、私たちはアデレードの街でハプニングを体験することとなる。

【旅のワンポイントアドバイス19】
異国の地で日本人に会うと、「あ、日本人だ!」と不思議な嬉しい感情が湧き上がってくる。その不思議な感情を味わってみることも、旅の良い思い出となる。


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