第27話 聖地ウルル ~地球を感じる場所エアーズロック~

文字数 1,755文字

旅をしていると広大な景色と出会うことがある。
それを目にすると人としての根源的な意識が目覚める。

ウルルでのこと。
朝が来た。本日、いよいよエアーズロックへと向かう。ただ、向かうのみならず、あの大きな岩の頂上まで登る。
ただし、エアーズロックはアボリジニの方々の聖地、決して軽々しい気持ちで登ってはならない。聖地であるので恭しい気持ちで登らなければなるまい。
現地アボリジニの方々はエアーズロックのことをウルルと呼ぶ。本来はウルルである。
――ここはアボリジニの方々に敬意を払いウルルと呼ぼう
私と広沢はウルル登頂バスツアーに参加した。
車窓からウルルが見えてきた。バスが近づくにつれ、その姿が次第に大きくなる。
2億3千年の歴史を持つ、高さ348m、周囲9.8kmの砂漠の真ん中にある世界最大級(世界で二番目)の巨大な一枚岩。地底にはその3倍の巨石が隠れている。
その岩肌は時間帯により刻々と色彩が変化していく。



乾いた空気、一面に赤色を帯びた砂に覆われた果てしなく広がる大地。そこにウルルは存在する。
ウルルの麓にバスが停車した。
ウルルを見上げると、小高い山くらいの大きさはある。
これが1つの岩の塊というのだから驚きである。
東京タワーよりも少し高く、頂上まで登るのに、およそ1時間掛かる。
写真で見る姿のウルルを登るとなると、壁を登るような印象を受ける。
そもそもウルルは山ではなく、1つの大きな岩。
――一体、あのような形状の岩をどのように登るのだろうか?
本当に登れるものなのだろうかとも思えてしまう。
そうこうしているうちに、ゲートに到着。どうやらここから登るらしい。
目の前には大きなウルルが聳え立つ。
私たちは神妙な気持ちで登り始めた。
実際に登ってみても、やはり見た目通りの急な坂道。



傾斜のキツイところには、鎖の手摺が据えられており、その鎖に捕まり自分の身体を持ち上げるようにして上へと進む。
「わりと急な坂だな」広沢は言った。
「そうだな」私も先を見上げ言った。



傾斜のキツイ区間を過ぎると、その後はわりと緩やかな道が続いた。
そして、ようやく……
――頂上到着
わりとキツイ難所もあった為、達成感も大きい。
頂上からの眺めは最高である。
「おぉ、これはスゴイ」私は言った。
「そうだな」広沢も目を細め遠くを眺め言った。
広大な荒野にウルルのような巨大な岩が他にも数か所見えた。
麓のバスを見下ろすと、小さな米粒くらいの大きさに見える。
一番、印象的なのは……
――地平線
そこには360度ぐるりとどこを見ても地平線が見えるというトンデモナク壮大な景色が広がっていた。このような景色は生まれて初めて見る。
どこまでも続く地平線は緩やかにカーブしているようにも見え、地球が球体であることを感じさせられる。
――あぁ、俺たちは地球に住んでいるのだな……
リアルにそう感じ、神妙な気持ちとなる。
ウルルの頂上は「地球」を感じる場所であり、聖地であることにも頷けた。
この広大な景色を目にしたことで、地球に生きていることを感じることが出来た。
ウルル、それは……
――地球で生きていることを感じることが出来る場所
「スゴイな……」感動しつつ、広沢が言った。
「だな……」感動しつつ、言葉少なく私も言った。
頂上には重工な金属で出来たテーブルのようなオブジェがある。



オブジェ側面にはモノを入れる空間があり、その中にペンとノートが入っている。
そのノートには頂上まで来た人たちのそれぞれの想いが綴られている。
私と広沢もノートに一筆書いた。
広大な大地が目の前に広がる山頂で、私は「ビッグになる」と、若者らしい言葉をそのノートに綴った。
アボリジニの聖地を登らせていただき貴重な体験となった。
人は地球に生きていることを感じつつ生きることが大切なのだ。
この体験から、ふとそのようなことを感じた。

人は地球の壮大な景色を目にして畏敬の念を感じる。
それはこれまで見たこともない地球の姿でもあった。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ地球への畏敬」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

【旅のワンポイントアドバイス27】
現在はアボリジニの方々の聖地であることが見直されウルルには登れない。やはり、本来はそれが正しいのかも知れない。各地にある聖地を訪れる時は恭しい気持ちが大切となる。


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