第40話 コアラがハプニング ~面白過ぎる実態(写真有)~ ワイルドワールド01

文字数 1,928文字

旅にハプニングはつきものである。
時には、動物がハプニングを起こしてしまっていることもある。

ケアンズでのこと。
私たちは『ワイルドワールド』へ向かう。
ワイルドワールドとはオーストラリア特有の動物を集めたテーマパーク。
なんと、そこでは様々な動物たちと直接触れ合うことができるのである!
これは楽しみだ。
私たちは期待一杯にワイルドワールドの入り口ゲートをくぐった。
オーストラリアの動物たちが私たちを待っている。
さて、どの動物に会いに行こうか……
「やはり、コアラだろ」私はコアラに会いに行こうと提案した。
「そうだな」広沢も同意、やはりコアラなのだ。
オーストラリアの動物と言えば、真っ先に思い浮かぶのは、やはり……
――コアラ
私たちは案内表示に従いコアラ区画へと向かった。
私はあまり動物には興味がないが、オーストラリアの珍獣にはとても興味がある。
それゆえ、コアラに会えることは、とても楽しみである。
コアラと言えば、一度、名古屋の東山動物園で見たことがある。
分厚いガラス張りの水槽のような所に多くの人の隙間から小さくコアラを目にした。
正直、あまりよく見えなかったので、コアラを観たという印象も薄い。
しかし、ここではコアラとしっかりと会うことが出来る。楽しみである。
ほどなくして、コアラ区画に辿り着いた。
オーストラリアのコアラ区画は屋内であっても、天井も高く開放的で広々としている。
ユーカリの木が何本も植えてあり屋外に近い環境にされている。
「さてさて、コアラはどこにいるのかな」
私はわくわく気分一杯にコアラを探した。
ところが、ぱっと見、どこにコアラがいるのか判らない。木の上を動く動物を探したが、見当たらない。
そんな矢先、ここで思わぬことが起きていた。そうである、それは……
――ハプニング!
ユーカリの木の上の方をよくよく見てみた。
「いた!」
――えええええっ!
そこには、まさかの驚愕の光景が展開されていた!
コアラは木の上にいた。ところが……
――ぐったりしている!
木の太い枝と枝の間に首が挟まり、ぐったりしているのである!
これはかなり衝撃的な光景である!
なんともコアラが自害を遂げているかのような姿をしているのである!



――あぁ、なんということだ……
「おい、あれ生きているよな……」私は恐る恐るコアラを指差した。
「あぁ、たぶんな……」広沢が目を細め言った。
なんだかとても見てはいけないものを見てしまった気分である。
すると突然、その神妙な空気をぶち破るような大きな声が聴こえてきた。
――ウオッホッホ!ウオホッホ!ウオホッホッホ!
なんと!近くにやって来たオーストラリアのおばさんが!大爆笑をはじめた!
その朽ち果てたコアラの姿を見て、大爆笑をはじめたのである!
「ヒーズ・フィニッシュトゥ!」
「ヒーズ・フィニッシュトゥ!」
おばさんは、私たちに何度もそう話し掛けながら大爆笑をしている。
「He is finished!」とは「あのコアラ逝っちゃってるわ!」である。
――そこ、笑うとこ?
そう感じたが、あまりにおばさんが愉快に笑っているので、正直、私は困った。
さすがは陽気なオーストラリアの方である。
ただ、やはりよくよく見ると、このコアラはとても笑える格好である。
かなりユーモラスな姿である。じわる。非常に、じわる。
――確かに、面白い
それにしてもこのコアラ……
この様な姿で私たちをお出迎えしてくれるとは、まさに奇跡的なハプニング。
おかげでとても面白いコアラの『実態』を知ることができた。
ところで、他のコアラはどうかと言うと、だいたい同じ様子である。
木の上でぐでぇ~としていて、まるで「やる気のない感じ」満載。
ただ、その姿がとても愛らしいものでもある。
「なるほど、これがコアラの日常か……」
聞くところによると、コアラは半夜行性の為、日中はこんな様子とのこと。
しかも一日20時間くらい寝るらしい。(どんだけ寝とんねん)
自然の状態に近いコアラの姿を見ることができて、私は大満足だった。
ただ、最初に見たコアラのインパクトがあまりにも強過ぎた。
コアラと言うと、今でもあのコアラの姿が真っ先に思い出される。
これもまた、とても面白い旅の良い思い出となった。

オーストラリアで目にしたコアラの実態が面白過ぎた。
世には予想を超えた驚きの実態があるものだと知った。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ驚きの実態」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

次回、私たちは獰猛なワニを素手で掴むこととなる。

【旅のワンポイントアドバイス40】
異国で動物たちと会う時は、これまでもっていたイメージが覆されることがある。自分が今まで抱いていたイメージと実際の姿との違いを感じながら会うと一層楽しさが増す。



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