第42話 愛らしい動物たちと ~不思議な空間~ ワイルドワールド03

文字数 1,759文字

オーストラリアには愛らしい動物がいる。
愛らしい動物との触れ合いは最高の旅の思い出となる。

ケアンズでのこと。
ワイルドワールドでワニを素手で掴んだ私たちは次の動物たちに会う。
次の動物たち、それは……
――カンガルー
こちらもオーストラリアを代表する動物。
ここワイルドワールドではカンガルー広場も見どころのひとつ。
敷地内の芝生広場にカンガルーが自由に放たれているとのこと。
通常の動物園ではカンガルーは柵の中にいて、私たちは柵の外から眺める。
ところがこの広場では、カンガルーたちの楽園の中に私たち人間も入っていき自由に触れ合うことが出来るというのである。
――素晴らしい
これはいやが上にも気持ちが昂る。
そうこうしているうちにカンガルー広場に到着。
いよいよこれからカンガルーたちに会う。ワクワクが止まらない。
そして遂にカンガルー広場が目の前に!ところが……
――ん?
「ちょっとイメージと違うな」私は言った。
「そうだなぁ」広沢も笑いながら言った。
確かに目の前には緑の芝生広場があり、そこにはたくさんのカンガルーたちがいる。
ところが、想像していた光景とは少しばかり違っている。
そこにいる30頭ほどのカンガルーたちが、皆、ぐうでぇと芝生の上に横たわっている。
ほぼ全員、見事に寝そべっているのである。
写真で見るような、立ち姿のカンガルーを想像していただけに、これには驚かされた。
皆、とても気持ちよさげに寝そべっている。平和である。
この光景を見て、保育園の「お昼寝の時間」を思い出した。
遊戯室に布団を敷き、園児たちが皆寝ていたあの平和な空間。まさにそれである。
カンガルーたちもお昼寝の時間なのだろうか。
緑の木々に囲まれ、心地よい風が吹き、ゆったりと流れる時間の中で、カンガルーたちが寝そべる芝生広場。とても和やかで、自然と心が落ち着く……
――不思議な空間
たまに小さな子どものカンガルーが、むくり、と起き上がり、辺りをぴょんぴょん跳ねている。その姿もなんとも愛らしい。
信じられないほど平和な空気で満ちていて、この広場に腰を下ろし座っているだけでも幸せな気分となる。
「ここは天国なのか」
これほどまでの平和な空間をこれまでに味わったことはない。此処はかなり特別の場所のように感じる。
――まさに楽園
ガイドさんが紙袋に入ったカンガルーの餌をくれた。
その餌を手の平の上に乗せてみる。
すると、ぴょこぴょこと子どものカンガルーが跳ね寄ってきた。
「おぉ、すごい」私は思わず歓喜の声をあげた。
小さなカンガルーが私の手の平の上にある餌をパクパクと食べている。
とても愛らしく、その姿に感動すら覚える。
芝生に座り餌を与えていると、私の膝に前足を掛けてくるカンガルーまでいる。
人間をまったく怖れず、とてもよく懐いている。
中でもワラビーは特別に愛らしい。
ワラビーとは現地の言葉で小形のカンガルーの総称。
立ち姿で40cmほどのワラビーがちょこんと立っている様子は、とても愛らしい。
ようやく立つことが出来るようになったばかりの人間の赤ちゃんのような雰囲気を持っている。ずっと見ていても飽きることがない。
オーストラリアに来る前はカンガルーというと、愛らしいと言うよりは、立ち上がり向かい合い、ぴょんぴょん跳ねながらボクシングをしているイメージだった。
実際に触れあったカンガルーたちはとても呑気でゆったりとした愛らしい動物であった。
私は動物を飼いたいと思ったことは一度もない。
それなのに「一緒に暮らすとしたらカンガルーだな」ふとそんなことを思った。
どうやらカンガルーの持つ独特の穏やかで平和な周波数に魅了されたらしい。
私にとって初めてともいえる愛らしい動物たちとの触れ合いの時間。
心に残るとても素晴らしい最高の旅の思い出となった。

普段、私は動物にはさほど関心がない。
その私がカンガルーを愛らしく感じたことは新たな発見だった。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ新たな発見」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

次回、私たちはビーチでまさかの体験をすることとなる。

【旅のワンポイントアドバイス42】
機会があれば、動物と直接触れ合ってみる。その動物の持つ独特の雰囲気を体感することができ、自分の抱いていたイメージと実際とが違うということを発見できることもある。


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