第28話 それから

文字数 1,050文字

「手掛かりは少ないし進展ないわね。ただ、防犯カメラに写っていたのは確実にリペアだね」
 マリアがビールを飲み干した。
「そうだな。まず、キムを探し出さないと。迷宮入りだけは避けたいところだな。うん。ここって本当にケインの店かい?いい雰囲気だ」
 ステュアートが少し暗いオレンジ色に光るシックな店内をじっくりと観察した。壁は四方がレンガ造りで高級感を漂わせていた。カウンターの上にはウィスキーが美しく並べられている。
 客たちは静かに会話を楽しんでいた。
 スティーブンはカウンター席でジョイとケインと何か話している。
 「最近、この店を買い取って改装しオーナーになったらしいよ。でもSIDらしく防犯カメラの数はすごいなぁ」
 ステュアートはこの店、全く知らなかったと嘆いている。
 ケインがカウンターの中から出てきてマリアたちのテーブルにやって来た。
「お代は払ってもらうよ」
 笑いながら生ハムとルッコラのサラダをテーブルに置いた。
「俺たち、ケインが店をやってるなんて何も聞いていなかったからなぁ」
 ステュアートがマリアを見つめながら相槌を待った。
「そうよね。だから秘密にしたケインのおごりよ」
 そう言ってビールを二本追加注文した。
「そうだな。仕事を忘れて今日は飲んでいけ。俺のおごりだ」
 そう話すとケインはカウンターの中に戻り、グラスにバーボンを注いだあと、奥のドアを開けバックヤードに入っていった。
「ステュアート、彼女はできた?」
 マリアがケインが去っていたのを目で追いながら聞いた。
「俺かい?いつも通りに片っ端から声をかけまくるが全くダメだね。その日暮らしさ」
 笑いながらビールを口に含んだ。
「一夜限りなの?」
「ああ。いつもだ。この仕事をしているとわかるだろ」
 マリアに理解を求めた。
「そうね。わかるわ。わたしもよ」
 同情でもなければ慰めでもない。理解し合っているだけだ。
 似た者同士がパートナーだねと言ってマリアもビールを飲み干し追加注文をした。

「大丈夫か?」
 ケインはシャロンとレイチェルに話しかけた。奥の隠し部屋にシャロンとレイチェルがかくまわれている事はスチュアートとマリアは知らない。
「ええ大丈夫」
「わたしも」
 レイチェルはベッドに横になり天井を見つめ、シャロンはパソコンに向かい、何かを調べていた。
「ミラーと俺は昔からの友人だ。ここにいれば心配ない」
「わかったわ」
「しばらくは外には出ないでくれよ。何か必要なものがあればジョイに言ってくれ」
「ええ、そうするわ」
 シャロンは痛む肩の傷口を手で押さえた。







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登場人物紹介

シャロン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シーズン1ではSHIHOとして潜入捜査をしていた。過去に治験された薬の影響に悩まされる。<向こうの世界>へ行った経緯がある。

ケイン。特別捜査部処理課SIDの責任者。シャロンのボス。シャロンの父親代わり。

創一郎。ファミリー製薬会社の社長。シャロンの恋人。幼き頃シャロンと同様に治験された過去を持つ。

スティーブン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。ケインの右腕。シーズン1ではシャロンと共に潜入捜査していた。

レイチェル。シャロンの血のつながらない妹。小学校の先生。

マリア。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

ステュアート。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

徹。創一郎の弟。ファミリー製薬会社の天才研究者。

そうじ屋。通称ブラック。スティーブンの仲間で殺し屋。

通称リペア。殺し屋。

ミラー。自称カウンセラー。

ジェームズ長官。

ハリス州知事。

マシュー。高校を中退。<地球守護会>に入会し自然保護活動に没頭する。

グレース。

キム。向こうから来た研究者。

大統領。ケインの昔からの友人。

国家中央情報局 局長 ロバート。

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