第8話 シャロンの悪夢

文字数 851文字

「ううう、うわぁ、うう。ああぁ」
 シャロンがうなされている。
「大丈夫だ、シャロン。もう終わったよ」
「何?ここ、ここは何処なの?今、む、

に行けそうなの」
「向こうって何処だい?ここは俺の家だよ」
 ソファから起き上がり創一郎はベッドに横たわっているシャロンに答えた。
 シャロンは退院してから三日経っても良く眠れないでいた。
「また、誰かがテロを起こす夢をみたわ」
 同じ夢を何度も見る。
 テロ実行犯が爆弾を仕掛けてるところや新種のウィルスをばら撒くところだ。
「まだ完全に回復していないんだから仕方ないよ」
 シャロンはどうもいつもと感覚が違う事に感づいていた。
「レイチェルはどうなったの?」
「まだ入院しているよ」
 何度も同じ事を聞くシャロンに創一郎は戸惑いを隠しきれない。
 ケインからはゆっくり休むように告げられてはいたが仕事に戻ろうとする。
「長期休暇をもらっているんだから仕事を忘れたらいいのに。俺は仕事に行くよ。すぐに帰ってくるから。食べものは冷蔵庫にあるよ」
 創一郎は紺のジャケットをはおり、身支度を早々に済ませた。
「ありがとう」

 シャロンは汗を拭き目を閉じ深く息を吸った。
 何かが起ころうとしている。この街でたくさんの人が死ぬ。誰も気づいていない。どうすれば何をすれば良いのか。手掛かりは何も無い。誰もがただの妄想だと決めつけるのが目に見える。頭が割れそうに痛い。
 自分に問いただしてみても単なる偶像で未来が予見できるとも思えない。

 ◇◇◇

「なんて事だ!息子が殺されただと!誰の仕業だ」
 中国マフィアBHのボスの王は怒り狂っていた。王と言っても王は名前だ。
 あれほどカタギになれと言っていたのに薬にのめり込んでいた息子のことを何も知らなかった自分を責めた。
「やったのは特別捜査官のSIDたちです」
 李は答えた。
「SIDだと!そうか。くそが!」
 王は自分の組織が表に出ず裏から仇を討つことを模索した。相手が捜査官であろうとためらいはしない。怒りの納め方はやられたらやり返すことだ。
 それが王のやり方だ。





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登場人物紹介

シャロン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シーズン1ではSHIHOとして潜入捜査をしていた。過去に治験された薬の影響に悩まされる。<向こうの世界>へ行った経緯がある。

ケイン。特別捜査部処理課SIDの責任者。シャロンのボス。シャロンの父親代わり。

創一郎。ファミリー製薬会社の社長。シャロンの恋人。幼き頃シャロンと同様に治験された過去を持つ。

スティーブン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。ケインの右腕。シーズン1ではシャロンと共に潜入捜査していた。

レイチェル。シャロンの血のつながらない妹。小学校の先生。

マリア。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

ステュアート。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

徹。創一郎の弟。ファミリー製薬会社の天才研究者。

そうじ屋。通称ブラック。スティーブンの仲間で殺し屋。

通称リペア。殺し屋。

ミラー。自称カウンセラー。

ジェームズ長官。

ハリス州知事。

マシュー。高校を中退。<地球守護会>に入会し自然保護活動に没頭する。

グレース。

キム。向こうから来た研究者。

大統領。ケインの昔からの友人。

国家中央情報局 局長 ロバート。

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