第37話 シャロン再び向こうの世界へ

文字数 961文字

 同じような部屋だが向こうへ身体が導かれる。 

 ドアを開けて一度、外に出てみる。

 トイレの中だ。

「え、ここはどこなの?」
 
 中をもう一度確認してみる。確かにトイレの中だ。広く清潔で明るくどこかのオフィスのトイレを思い起こさせる。

 音もなく誰もいない。トイレから出てみる。

 見覚えがある。夢の中にいるようなこの冷たい感じ。懐かしい独特な香り。ここは間違いなく製薬会社だ。長い廊下があり透明なガラスの扉が並んでいる。まるで以前に潜入捜査したキング率いる大東亜ファミリー製薬会社だ。
 忙しそうに白衣を身にまといみんな働いている。ゴーグルをして薬剤を調合している人、電子顕微鏡をのぞいている女の人、何かの機械を調整している人……。

 すると、前からスーツを着た男の人が歩いてきた。
「創一郎......」
 かすかに声が出てしまった。
 いや、すごく似ているけれど違う。
「えっ。圭太君?」
 かなり成長しているが圭太君に思えた。年齢は三十歳くらいに見える。同年齢くらいだろうか。
 彼が近づいてきた。

 目の前に来た時に思い切って切り出し探りを入れた。
「すみません。圭太......さんですよね」
 彼は一瞬ひるんで困惑した表情をした。なぜ私を知らないのかという態度だ。
「そ、そうだけど。何か用かな?」
 不思議そうにシャロンをじっと見つめた。
「シャ......いや、SHIHOよ。覚えている?」
「いや。わからないな。君はうちの社員だよね。ここにいるってことは」
「え、ええ。そういうことになるかな」
 シャロンは返す言葉が見つからず、焦ってごまかそうとした。
「どこの部署?」
「情報部」
「そんな部署あったかなぁ。サイモンがまた新しく作ったのか」
「すまない。今から会議なので用があったら秘書に言ってくれ」
 そう告げたら数名引き連れて足早に去っていった。
 後ろを歩いていた女性を引き留め、彼のことを聞いたらここの社長だった。

 圭太君がいるということは

。成長した圭太君は向こうの世界で製薬会社の社長なのか。それも大東亜ファミリー製薬そっくりな会社。

 いったいどうなっているのだろう?

 時間の流れのスピードが現実世界と異なっているのは確かだ。

 さてさて、どうしたものか。

 こちらにキムがいたかどうか調べてみる価値はあるよね。

 シャロンは動き出した。








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登場人物紹介

シャロン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シーズン1ではSHIHOとして潜入捜査をしていた。過去に治験された薬の影響に悩まされる。<向こうの世界>へ行った経緯がある。

ケイン。特別捜査部処理課SIDの責任者。シャロンのボス。シャロンの父親代わり。

創一郎。ファミリー製薬会社の社長。シャロンの恋人。幼き頃シャロンと同様に治験された過去を持つ。

スティーブン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。ケインの右腕。シーズン1ではシャロンと共に潜入捜査していた。

レイチェル。シャロンの血のつながらない妹。小学校の先生。

マリア。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

ステュアート。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

徹。創一郎の弟。ファミリー製薬会社の天才研究者。

そうじ屋。通称ブラック。スティーブンの仲間で殺し屋。

通称リペア。殺し屋。

ミラー。自称カウンセラー。

ジェームズ長官。

ハリス州知事。

マシュー。高校を中退。<地球守護会>に入会し自然保護活動に没頭する。

グレース。

キム。向こうから来た研究者。

大統領。ケインの昔からの友人。

国家中央情報局 局長 ロバート。

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