第23話 五人の計画

文字数 933文字

 予定通りバイオX菌が手に入った。
 これを元に人々を滅ぼすのだ。増えすぎた人口を減らし完全な自然を取り戻す。

「まだやるの?トーマス議員の息子は死んだし、ウィルソンは捕まったよ」
 白衣をまとったキムはマシューを問い詰めた。
 
 ポットデルのバーの裏口付近でもめているとき、トーマス議員は誰かに撃たれた。
 あの時、慌てたキムとマシューは訳が分からずその場から逃げ出した。
 
 数日後、マシューとウィルソンはクラブで絡まれてたと誤解しウィルソンはギャングと間違えたBJを撃ち殺した。

「郭だって死んだよ。もうやめようよ」
「郭は関係ないよ。社会に対して復讐したかっただけだから」
 
 郭は環境保護活動をすれば父が関係している中国企業が儲かる。愚かだった過去の自分を反省し、父との絆を取り戻すために環境保護活動を手段とした。中国マフィアにとっても良いことばかりのはずだった。
「郭は僕の世界に来て僕に例の薬を打った......儲かる良い話があると言って......」
「そうだったよね。そして持ち出したんだよね」
「そうなんだよ。僕は騙された。だから、もう普通に生きて行こうよ。逃げ道ばかりを探すのはやめようよ。理性は大切だよ。マシュー」

 五人で世界を変えると約束したのにとマシューはうつむき呟いた。

「キム、向こうの世界はいいところなんだろ?環境破壊もなくて自然が豊かでみんな楽しく暮らしているんだよね?」
 マシューが何か思いつめたように尋ねた。
「そうだよ、よく似ているけど、こっちとは違うよ。だから、僕がいた世界のようにこっちの世界もマシューは正しく導くんだろ?僕はもう向こうに帰れそうにないし」
 キムは落胆していたが心の整理をしようと努めていた。
 薬の効果が薄かったキムは、自分の世界に帰る手段を求めてファミリー製薬会社の助手の仕事に何とか有り付いたが、例の薬はどこにもなかった。帰ることを諦めるしかなかった。
 今ではファミリー製薬会社に戻ることすら出来ないでいた。

「ああそうだね」

 マシューはグレースのやさしい笑顔を思い浮かべた。

 バイオX菌を武器にトーマス議員の息子とウィルソンの為にもやり遂げると誓った。

 SIDもつぶしてねと言っていたよね。

 また、グレースは喜んでくれるはずだ。





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登場人物紹介

シャロン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シーズン1ではSHIHOとして潜入捜査をしていた。過去に治験された薬の影響に悩まされる。<向こうの世界>へ行った経緯がある。

ケイン。特別捜査部処理課SIDの責任者。シャロンのボス。シャロンの父親代わり。

創一郎。ファミリー製薬会社の社長。シャロンの恋人。幼き頃シャロンと同様に治験された過去を持つ。

スティーブン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。ケインの右腕。シーズン1ではシャロンと共に潜入捜査していた。

レイチェル。シャロンの血のつながらない妹。小学校の先生。

マリア。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

ステュアート。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

徹。創一郎の弟。ファミリー製薬会社の天才研究者。

そうじ屋。通称ブラック。スティーブンの仲間で殺し屋。

通称リペア。殺し屋。

ミラー。自称カウンセラー。

ジェームズ長官。

ハリス州知事。

マシュー。高校を中退。<地球守護会>に入会し自然保護活動に没頭する。

グレース。

キム。向こうから来た研究者。

大統領。ケインの昔からの友人。

国家中央情報局 局長 ロバート。

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