第30話 敵は誰なんだ

文字数 588文字

 二人きりの大統領執務室に沈黙が流れた。高い天井、広々とした部屋なので緊張感がより増して感じられる。
 
 口火をきった。
「国家中央情報局のロバートが動いているらしいな」
 大統領は小さくため息をつき、窓の外の景色を見ながらケインに切り出した。中庭は解放的で美しい。
「ああ、厄介だ。シャロンを嵌めようとしている」
 ケインはソファーに腰掛け、心の中の憤りを抑えることに集中した。
「狙われているのか?」
「完全にテロ実行犯扱いだ。しかも殺し屋にも狙われている」
 大統領はどうするべきか悩んだ。事件に介入し表立って大統領自ら火消しに回るわけにはいかない。
「おそらく長官も」  
 ジェームズ長官はシャロンが<向こうの世界>の人間ではないかと疑い始め、この国の厄介者だと思っていた。
「確か、ジェームズ長官とロバートは以前、特捜の同期だったよな」
 大統領はあの頃を思い出していた。
「そうだ。それに、IRの戦地にも派遣され同じ部隊だったはずだ」
 ケインはカナリア新教事件も裏で長官が糸を引いていたに違いないと確信していた。愛国心から来る錯覚か。ただの黒幕か。

「ケイン、食い止められるか?シャロンをなんとしても守ってほしい」
「ああ、俺が何とかする」
「テロの犯人も早く捕まえてくれ。国民が暴動を起こし始めているからな」
 未だに手がかりがつかめない状況にケインたちも焦り始めていた。
「ああ。理解している」




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登場人物紹介

シャロン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シーズン1ではSHIHOとして潜入捜査をしていた。過去に治験された薬の影響に悩まされる。<向こうの世界>へ行った経緯がある。

ケイン。特別捜査部処理課SIDの責任者。シャロンのボス。シャロンの父親代わり。

創一郎。ファミリー製薬会社の社長。シャロンの恋人。幼き頃シャロンと同様に治験された過去を持つ。

スティーブン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。ケインの右腕。シーズン1ではシャロンと共に潜入捜査していた。

レイチェル。シャロンの血のつながらない妹。小学校の先生。

マリア。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

ステュアート。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

徹。創一郎の弟。ファミリー製薬会社の天才研究者。

そうじ屋。通称ブラック。スティーブンの仲間で殺し屋。

通称リペア。殺し屋。

ミラー。自称カウンセラー。

ジェームズ長官。

ハリス州知事。

マシュー。高校を中退。<地球守護会>に入会し自然保護活動に没頭する。

グレース。

キム。向こうから来た研究者。

大統領。ケインの昔からの友人。

国家中央情報局 局長 ロバート。

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