第40話 大統領執務室にて

文字数 877文字

 大統領執務室では長い沈黙が流れた。

 大きいテーブルの対面にはジェームズ長官と国家中央情報局のロバート局長が不機嫌な顔で座っている。二人は旧友だが立場が変われば状況が変わる。
「遅れてすまない」
 大統領が部屋に入ってきてゆっくりと椅子に腰を下ろした。三人以外この部屋にはいない。
「どういうご用件で」
 大統領が話を始める前に長官が口火を切った。それを見てロバートも戦闘態勢に入った。
「単刀直入に言うが、うん、シャロンのことなんだが」
 やはりなという張り詰めた空気が室内を流れていく。
「シャロンが犯人ではない。容疑者を見つけた」
 大統領が自信たっぷりに話しかけると二人は驚きを隠せなかった。
「誰ですか?」
 ロバート局長が聞いた。殺し屋のリペアがシャロン殺しを辞めたことに怒りを覚えていたところだったので局長の腹立たしさが増していく。
「それは言えない」
「なぜです?」
 ジェームズ長官が問い詰めた。

と関係しているからだ。私の特別案件とする」
「シャロンは向こうの人間なのではないでしょうか?」
 ロバート局長は以前から疑問だったことを直接、疑問をぶつける
「違う。こちらの普通の人間だ。もうシャロンは自由だ。あとはSIDが真犯人を捕まえ処理する。以上だ。明日、会見を頼む」
 二人は顔を見合わせ納得できないまま執務室を後にした。

 『ケイン、話があるんだが……』
 『エディ。......大統領、何か?......』

 ◇◇◇

 翌朝、市警の建物の玄関口でジェームズ長官が記者会見を行い、シャロンの容疑が晴れたこと、真犯人の目星がついたことを淡々と話した。
 長官がすべて話し終えた時にゆっくりと床に倒れた。
 一瞬、誰もが何が起こったのか分からなかった。SPが長官を守るべく盾になった時にはすでに遅かった。
 
 左胸から血が噴き出している。

 辺りは騒然となった。男が必死に長官の傷口を止血している姿が映像としてニュースで流れた。
 SIDのチームも市警も次々と犯人を探し出すために事務所から飛び出し四方八方に走り出す。
 ケインはSIDのモニターの映像を黙って見上げていた。





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登場人物紹介

シャロン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シーズン1ではSHIHOとして潜入捜査をしていた。過去に治験された薬の影響に悩まされる。<向こうの世界>へ行った経緯がある。

ケイン。特別捜査部処理課SIDの責任者。シャロンのボス。シャロンの父親代わり。

創一郎。ファミリー製薬会社の社長。シャロンの恋人。幼き頃シャロンと同様に治験された過去を持つ。

スティーブン。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。ケインの右腕。シーズン1ではシャロンと共に潜入捜査していた。

レイチェル。シャロンの血のつながらない妹。小学校の先生。

マリア。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

ステュアート。特別捜査部処理課SIDの特別捜査官。シャロンの同僚。

徹。創一郎の弟。ファミリー製薬会社の天才研究者。

そうじ屋。通称ブラック。スティーブンの仲間で殺し屋。

通称リペア。殺し屋。

ミラー。自称カウンセラー。

ジェームズ長官。

ハリス州知事。

マシュー。高校を中退。<地球守護会>に入会し自然保護活動に没頭する。

グレース。

キム。向こうから来た研究者。

大統領。ケインの昔からの友人。

国家中央情報局 局長 ロバート。

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