第４１話　プロの仕事

　何も痕跡を残さずにターゲットを確実に仕留める。
　
　プロの仕事だ。

「犯人はどこから狙って撃ったんだ？」
　ケインが皆に聞いた。チームがあらゆる映像を入手し分析した。比較的この辺りは防犯カメラが多い。それににもかかわらず犯人の姿が映し出されない。
「この弾道を計算すると、えっと、右のビルの三階です」
　リョウがキーボードを叩きながら答えた。
「プロだな」
　ステュアートが嘆いた。距離がある上に二発とも心臓に命中。
　ケインとスティーブンが目を合わせた。

「殺し屋」
　マリアが呟いた。

「シャロン！」
　サングラスをかけたシャロンが腫物のに触るような目で見る市警を抜けてSIDの本部にやって来た。
「よく無事だったわね」
「大丈夫か？心配したぞ！」
　みんながうれしそうに出迎えた。

「ええ、ありがとう。疑いが晴れたわ。でも長官は残念だわ」
「ああ。そうだな。すぐにチームで捜査しよう。市警はもう動き出してる。あのビルを当たれ」
「了解！」

「ケイン、話があるの」
「そうか」
　ケインは自分の奥のオフィスにシャロンを招き入れ扉を閉めた。

　◇◇◇

　ビルの三階の空き部屋は一つで狙った場所は特定できた。
「ここにも手がかりはないわね」
　マリアが言った。
「そのようだ」
　スチュアートが窓の外を見て、ライフルを構えるポーズをとった。
「ここからならプロは確実に狙えるな」
「そうね。本当に人って簡単に死んでしまうよね。死を意識していないのに。この仕事をしていたらつくづく思うわ」
　嫌気が刺したようにため息をついた。
「ああ。妹をいつも思い出す」
「ご、ごめん」
「いや、いいんだ。ただ家に帰りひとりで部屋にいると、つい妹の名を呼んでしまうんだ。いつものように」
　ステュアートはいつ死んでもいいと覚悟を決めているような姿にマリアには寂しく見えた。
「死なないでよ」
「ああ。そうだな」